GI灘五郷.2 地理的表示が伝える“灘”の日本酒の底力。

日本だけでなく、幅広く海外に向けて、日本酒の価値を向上する「GI」。

日本酒の「地理的表示制度」は、
酒の品質や社会的な評価が、
その“お酒の産地”と明確に
繋がっていることが認知されて
いる場合に、その産地名を
商品名として表示することが
できる制度です。

日本酒の地理的表示は
国税庁長官によって指定され、
その商品には「GI
(Geographical Indication)」
表示が許可されています。

「GI灘五郷」は、2018年
(平成30年)6月28日に、
“味わいの要素の調和がとれており
、後味の切れの良さをもつ日本酒”
を生産する「灘五郷」が、
国税庁長官の指定を受けました。

この日本酒の「地理的表示制度」は、
ヨーロッパを中心とした、
ワインをはじめとする
原産地呼称制度に由来します。

たとえば、ワインのラベル表示は、
ワインの産地や品質を選ぶ際の
判断要素として消費者の
判断基準とされてきましたが、
著名になった産地名を名乗る
安価なブレンドワインが
流通したことなどから、
それを保護する法的な対応が
必要となったといえます。

フランスの
「AOC(アペラシオン・
ドリジーヌ・コントロレ)/
原産地呼称統制制度」や
イタリアの
「DOCG(デノミナツィオーネ・
ディ・オリージネ・
コントロッラータ・
エ・ガランティータ)/
保証つき原産地呼称統制」など、
ワインをはじめ、
農産品やチーズなどに課した
各国独自の認定制度が元となり、
欧州連合(EU)がそれらを
統括する制度として法律に定めた
「原産地名称保護制度」が、それ。

1992年、EU法に制定されました。

具体的には、よく耳にする
ゴルゴンゾーラ、パルミジャーノ・
レッジャーノ、ロックフォール
などのチーズ、
シャンパン、ボルドー、マルゴー、
ブルゴーニュなどのワインなどの
名称がこの制度に保護されています。

日本では、WTO(世界貿易機関)が
1994年に設立の合意が行われた際に、
ぶどう酒と蒸留酒の地理的表示の保護
が加盟国の義務とされたことを受けて、
国税庁が
「地理的表示に関する表示基準」
を平成6年に制定。

国内外の地理的表示について
適正化が図られ、
さらなる制度活用のため、
平成27年10月に
地理的表示の指定を受けるための
基準の明確化が行われ、
すべての酒類が制度の対象となりました。

 

「GI灘五郷」表示は、灘五郷の中の“灘五郷”。

灘五郷は、
「西郷(にしごう)」
「御影郷」
「魚崎郷」
「西宮郷」
「今津郷」
の5地域の総称です。

 

寒造りに適している
六甲山から吹き降りる“六甲おろし”や、
酒造りに最適な“宮水”、
酒造りに適した“山田錦”
をはじめとする酒造好適米が
数多く収穫されるなど、
酒造りに直接的に適した環境は
もちろんのこと、
丹波杜氏の高度な酒造りの技術が
受け継がれた歴史があります。

また、海に隣接していたことから、
江戸の昔より、
下り酒を運ぶ樽廻船の要衝地である
ことで、酒造りが盛んになりました。

そして、現在も日本一の生産量
を誇る酒どころであることが、
「GI灘五郷」の指定を受けた背景にあります。

「GI灘五郷」の基準となる
原料および製法には、
次のような厳しい基準が
設けられています。

【原料】
・ 米、米麹は国内産米であること
(国内産米は、農産物検査法
(昭和26年法律第144号)により
3等以上に 格付けされたものに限る)。

・ 灘五郷内で採水した水のみを
使用していること。

・ 清酒原料のうち、アルコール以外
は用いることができない
(原料中、アルコールの重量が
米(麹米を含む)の重量の
100分の25を超えない量で
用いる場合に限る)。

【製法】
・ 灘五郷内で醸造、貯蔵および
容器詰めが行われていること。

菊正宗では、
「超特撰 嘉宝蔵 雅」が、
その確かな品質を保証するもの
として、この「GI灘五郷」に
認可されています。

灘五郷そのものが信頼のブランド
として全国に認知されているなかで、
「GI灘五郷」マークを冠したものは、
まさに“灘五郷の中の灘五郷”として、
旨さの頂点にあるといえるでしょう。

GI灘五郷.1 日本酒の歴史の重みを、地理的に裏づけられる“信頼”。

世界遺産は、歴史的価値を保全する共通認識。

2019年7月6日、
アゼルバイジャンのバクーで開催
された第43回世界遺産委員会
において、「百舌鳥・古市古墳群」
がユネスコの“世界文化遺産”に
登録されました。

今回の登録で日本の世界遺産は
23件(そのうち、文化遺産は19件、
自然遺産は4件)となりました。

現在1121件の世界遺産
(うち文化遺産869件、
自然遺産213件、
複合遺産39件)
が登録されています。

歴史をさかのぼると、第1回目の
世界遺産条約締約国会議が
開催されたのは1976年11月。

1978年には、ガラパゴス諸島や
西ドイツのアーヘン大聖堂など
12ヵ所の世界遺産リスト登録
が行われました。

先ごろ登録された大阪府堺市の
「百舌鳥・古市古墳群」は
大阪府で第1号となる“世界遺産”で、
今後、観光名所として、この地を
訪れる人が増えることが予測されます
が、古墳はことのほか大きく、
写真でお馴染みの全体像は、空から、
もしくは高層ビルの高層階のみに
許されたロケーション。

また、古墳そのものが
天皇陵をはじめとする
古代人のお墓にあたるため、
中に入ることはできません。

観光資源として“世界遺産”を
どうアピールしていくかが、
今後の大阪府や堺市に課せされた
目標のひとつといえるでしょう。

“世界遺産”は、ユネスコ
(国際連合教育科学文化機関)が、
古くからの歴史や文化を刻む
景観をはじめ、自然環境などを
“普遍的な価値を持つ物件”として、
世界的に保護を指定したものです。

世界遺産の他にも、和食や和紙、
来訪神などが登録されている
“無形文化遺産”や、
筑豊の炭坑画や
慶長遣欧使節関係資料などの
“世界の記憶”があります。

過去の歴史価値を後世に伝えるもの
として、大切な役割を担っている一方
で、“歴史建造物遺産の現状維持と
バリアフリー改築の問題”や
“参加国の政治的な思惑が
のぞき見える選考の不透明さ”など、
今後の課題もいくつかあるようです。

“世界遺産”に登録された歴史建造物
を維持するのには、新しく建てるより
費用がかかるという話もチラホラ。

でも、できることなら、後世まで
維持し続けて欲しいものです。

また世界の歴史遺産以外でも、
関係団体や組織が“伝統の保護”を
目的に、長年にわたって培った歴史を
後世に伝える活動を行っています。

そのひとつに世界貿易機構(WTO)の
「地理的表示」があります。

その代表的なものとして、
フランスのボルドーワイン
(ボルドー産)、
イタリアのゴルゴンゾーラチーズ
(ゴルゴンゾーラ産)、
スイスのエメンタールチーズ
(エメンタール産)など、
商品の名称が地理的表示や原産地表示
となり、品質や特性がその産地に
由来することを表しています。

こうした取り組みも、
代々技術を受け継いだものを
大切に守り続けている
“遺産”のひとつといえます。

「GI灘五郷」表示は、長い歴史の“信頼”のブランド。

日本でも、昔から文化財保護法に
基づいて国宝、重要文化財、史跡、
名勝、天然記念物などの指定や
選定、登録が行われてきました。

“国宝”という言葉が最初に使われた
のは、1897年(明治30年)の
「古社寺保存法」制定時。

その後1929年(昭和4年)に
「国宝保存法」が制定されました。

1950年(昭和25年)に
「文化財保護法」が施行されるまでは
、国宝と重要文化財の区別がないため
“旧国宝”とされ、
「文化財保護法」制定後のものを
“新国宝”として区別しています。

そして、世界貿易機構(WTO)の
「地理的表示」に準じた
「地理的表示(GI)保護制度」
の運用も開始しています。

業界の統括官庁によって
取り組みは異なります。

農林水産省では
「神戸ビーフ(兵庫県内)」
「夕張メロン(北海道夕張市)」
「八女伝統本玉露(福岡県内)」
などを登録。

日本酒の統括官庁は国税庁。

国税庁長官が指定した
酒類の地理的表示に
「灘五郷(神戸市灘区、
東灘区、芦屋市、西宮市)」
が登録されています。

「GI灘五郷」を表示するためには、
厳しい生産基準があり、
それをクリアした灘の酒のみに
許された勲章といえます。

江戸の昔より、
人々のくらしに根付いた
“灘五郷”ブランド。

「GI灘五郷」表示は、
その長い歴史に対する
“信頼の証”として、
自信を持って
旨い酒をお届けします。

ひと夏の熟成で磨かれた日本酒「ひやおろし」。

お待ちかねの「ひやおろし」は、9月9日が解禁日です。

夏から秋への季節の移り変わり
ともなると、日没時間が早くなり、
夜半には虫の音が聞こえ、
そしてなにより、
時折心地よい涼しい風が吹くなど、
自然の“表情”から、
秋の気配を実感する
機会が多くなりました。

そんな、秋を肌で感じはじめる
ころのお楽しみのひとつが、
「ひやおろし」の解禁です。

「ひやおろし」の解禁日は、
重陽の節句にあたる、
毎年9月9日。

重陽の節句は、
古来より伝承される五節句のひとつで
、“菊の節句”とも呼ばれ、
身体に溜った邪気を払い、
長寿を願って菊を飾ったり、
菊の花びらを浮かべた酒を
酌み交わすなどの風習が行われた、
大切な季節の節目のひとつ
とされてきました。

「ひやおろし」は、
その日を解禁日とする、まさに
秋を告げる日本酒といえます。

一般的な日本酒は、
火入れと呼ばれる加熱処理を、
出荷する前に2回行うのが基本。

火入れをするタイミングは、
醪(もろみ)を搾って
日本酒を貯蔵する前と、
日本酒を瓶に詰めて出荷する前で、
この火入れによって酵母を殺し、
酵素を失活させることで、
酒質を劣化させる雑菌の繁殖を防ぎ、
酒質を安定させます。

それにくらべると、
「ひやおろし」は、冬から春の期間に
、醪を搾り、火入れ(低温加熱殺菌)
をした“しぼりたて(新酒)”を
ひんやりとした蔵の中で
ひと夏かけて熟成。

出荷時に火入れをせずに
瓶に詰めるお酒です。

約半年間の熟成によって香りが整い、
味わいも角がとれて丸くなり、
酒質が格段に向上した
“生詰め酒”です。

この“生”を冠した日本酒には
いくつかの種類があり、
いずれのお酒にも
火入れが関わります。

● 生酒…
火入れ一度もしない酒で、
しぼりたてのみずみずしい
爽やかさを楽しむ酒。
火入れをしていない、
とてもデリケートなお酒。

● 生貯蔵酒…
貯蔵前の火入れを行わず、
出荷する前に一度だけ
火入れを行うお酒です。
生酒に近いお酒で、
特有の風味を持った
新鮮な香りや味わいを楽しみます。

● 生詰め酒…
「ひやおろし」が生詰め酒の代表格。
ひと夏を越えて熟成させるため、
丸みや深みの増した
香りや味わいが特長です。

きもとひやおろし体感セット

菊正宗では、
華やかな香りを纏った「大吟醸」
と、旨みが冴えわたる「本醸造」
の2種類をご用意しています。

火入れにより酒質を安定させた
「生酛本醸造」と「生酛大吟醸」
と一緒に、ぜひ飲みくらべ、
味の違いを体感するのも、
この時期だけの醍醐味。

また、秋口だけの季節限定商品
なので、早めに売り切れる
ことが予想されます。

見かけたら、
早めにお求めいただくことを
おすすめします。

松茸と日本酒

江戸時代、「ひやおろし」は酒蔵の近くでしか飲めない貴重なお酒。

「ひやおろし」を漢字で書くと、
“冷や卸し”。

江戸の昔、冬に搾った新酒が
劣化しないように春先に
火入れをして大きな桶に貯蔵。

夏の盛りを過ぎて
秋風が吹きはじめる
外気と貯蔵蔵の中の温度が
同じくらいになったころに、
“冷や”のまま、大きな桶から樽に
“卸(おろ)し”て、
火入れをせずに出荷したことから
「ひやおろし」と呼ばれました。

当時は、保存上の問題で広く流通
できなかったため、酒蔵の近くに
住む人しか飲めない貴重品で、
“秋の酒”として
重宝されたといいます。

新酒の荒々しさが消え、
味に丸みがでて、
ほどよく熟成した「ひやおろし」は、
酒のもっとも飲みごろ
とされていたようです。

厳密にいうと、
「ひやおろし」は製法、
別名の「秋あがり」は
酒の質を表す言葉です。

火入れ後に貯蔵し、
出荷時に火入れをしないお酒は、
秋の出荷に限らず「ひやおろし」
ということになります。

一方、「秋あがり」は、
新酒の荒々しさが消え、
味に丸みがでて、ほどよい熟成による
飲み頃の酒をいいます。

酒質が良くない場合には
“秋落ち”と表現されることも。

ということならば、“秋あがり”、
“秋落ち”の「ひやおろし」
があることになります。

そうしたこともあるようで、
全国的には「ひやおろし」という表現
が多く使われているようです。

きもとひやおろし大吟醸

「ひやおろし」が出揃うころは、
秋に旬を迎える食材も目白押しの時期。

脂ののったサンマや秋鮭などの魚介類、
松茸をはじめとするキノコ類、
サツマイモなどのイモ類、
まさに“食欲の秋”がはじまる時期です。

旨い「ひやおろし」を準備して、
味覚の秋を、存分にお楽しみください。

さんまと日本酒