三が日を過ぎても、心おきなく初詣を

慌ただしい年末年始。だからこそ、静かに向き合いたい初詣の作法。

年が明けて一週間も経つと、正月らしさも抜け、いつもの生活に戻ります。初詣も正月三が日の参拝がほとんど。それを過ぎると、今年の参拝を諦める方も多いと聞きます。とくに、晴れ着の女性が境内にあふれ、さまざまな屋台が参道に面して軒を並べる初詣のわくわくする特別感は、三が日だけのお楽しみなのです。

江戸時代は年の初めの都合の良い日に、地域の氏神様や菩提寺に参拝する行事が初詣でした。厳密な期限などなかったのです。この“初詣は三が日”という習慣が定着したのは大正末期から昭和初期にかけてのこと。

当時、都市開発が進み、私鉄各社が沿線の神社と結びついて、正月三が日に初詣を促すキャンペーンを行ったのが発端です。会社勤めの人が増え、休みが正月に集中したことや、新聞やラジオで“三が日の人出”“初詣客は◯万人”などと繰り返し報じたことも、「初詣=三が日」のイメージ定着に影響した考えられます。

そんな100年近く続いた初詣の習慣を覆したのは、あの新型コロナ禍でした。感染予防の観点から混雑を避けるためにとられたのが、“節分頃まで初詣を受け付ける”という措置です。多くの神社や寺院で、こうした期間延長の案内が出され、縁起物やお守り、破魔矢などの販売も期間に伴って延長されました。

この期限となった“節分”ですが、立春の前日にあたり、暦の上では立春が新しい年の始まりとされてきたためです。つまり、立春を迎える前日までを“年の初め”ととらえて、その間に行う初めての参拝を初詣と考えるというもの。江戸時代まで続いていた本来の初詣の儀式に戻ったともいえます。

また、初詣というと神社を思い浮かべがちですが、お寺へのお参りも初詣にあたります。もともと日本では神社とお寺を分け隔てなく信仰する“神仏習合の文化”が根づいており、年の初めに近隣の寺院へ参拝することも自然な習慣でした。大切なのは場所ではなく、その年に初めて神仏に向き合う心持ちという考え方です。

さすがに、神社と寺院での参拝作法は異なります。神社では“二礼二拍手一礼”が基本とされ、拍手によって神さまに敬意を示します。さらに深い敬意を表す場合に、より深いお辞儀をする“二拝二拍手一拝”も用いられます。一方、お寺では拍手は行わず、静かに手を合わせて合掌します。形式を正しく知ることは大切ですが、何よりも丁寧に真摯な気持ちでお参りすることが大前提です。迷ったら、静かに一礼して手を合わせて祈るのが共通作法。神社、お寺ともに大切なのは、感謝と敬意の気持ちです。

神社で手を合わせて祈願する際、神様にお願いするより、“努力するので、見守ってください”という決意表明のような参拝のスタイルが、神道精神にかなっているといわれます。よく誤解されますが、願いごとをしてはいけないという訳ではありません。五穀豊穣や無病息災、家内安全などの祈願は昔から行われてきました。そこに、感謝と決意を添えることで、参拝の意味は一層深まります。

三が日を過ぎ、少し落ち着いた時期だからこそ、静かな境内で自分自身と向き合う初詣があります。節分までのこの時期、自分の歩む一年を思い描きながら、改めて心を整える時間を持ってみてはいかがでしょうか。

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百八の鐘の音が運ぶ、大晦日の静寂。

煩悩を払い、新しい年を迎える日本の伝統。

最近は除夜の鐘を騒音と感じる方もいるようで、長く続く伝統文化も時の流れの中で少しずつ薄れているように感じます。除夜の鐘といえば、凛と冷え込んだ大晦日の夜に響く鐘の音。その音は百八つ打たれます。ところで、この“百八“とは一体何を意味しているのでしょうか。

仏教の教えによると、人間は生きていく中で百八つの煩悩を抱えているとされています。煩悩とは、欲望や怒り、嫉妬、迷いなど、心を乱す感情や欲のことです。つまり、鐘を百八回つくことで、その一年の煩悩を一つひとつ清め、心をリセットして新しい年を迎えるという意味が込められているのです。

この百八の数字にも諸説があります。たとえば、「六根(眼・耳・鼻・舌・身・意)」×「六塵(色・声・香・味・触・法)」×「三毒(貪・瞋・痴)」=108という説、この“三毒”が、“過去・現在・未来”の時間軸になったり、“好・悪・平”の三種の感情に置き換えられた説、一年を表す十二ヵ月と二十四節気、七十二候を足した数が108になる説も。つまり、ただの“多い数字”ではなく、人間の心の構造を細分化して象徴的に表した深い意味があるのです。

ちなみに、野球の硬球(公式球)の縫い目は108本で、煩悩の数に由来すると語られがちですが、これはあくまで後付けの俗説。8の字型に裁断された2枚の革を赤い糸で縫い合わせる際に、投げやすさなどの実用面の最適解として導き出された結果が108針というものです。

また、除夜の鐘をつく行為自体にも興味深い効果があります。単に鐘の音を聞くだけでなく、自ら手を合わせ、心を込めて鐘をつくことで、体内の緊張がほぐれ、精神が落ち着くともいわれています。まさに“音の瞑想”ともいえる瞬間です。夜空に響く鐘の余韻は、寒さと静けさが重なって心に染み入り、日常の喧騒から離れた非日常体験を生みます。もし、大晦日の夜、近所や出掛けた先で除夜の鐘が聞こえてきたら、迷わず見に行きましょう。運が良ければ、鐘をつく体験ができるかもしれません。

ちなみに、日本人は音に敏感であるという説もあります。蝉の声や秋の虫、野鳥の鳴き声などを聞き分けられるのは、日本ならではの環境や文化が影響しているのではないか、と考えられているのです。これは科学的に完全に証明されているわけではありませんが、こうした背景から、除夜の鐘の音に心が洗われるような荘厳さを感じるのも、日本ならではの文化的感覚なのかもしれません。

年末に耳を澄ませば、どこからともなく聞こえてくる鐘の音。これを機に、除夜の鐘の意味を改めて考え、静かな気持ちで新年を迎えてみてはいかがでしょうか。百八つの鐘は、私たちの煩悩をやさしく流し、清らかな心で一年をスタートさせてくれる、そんな魔法のような存在なのです。

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冬の魚介と鍋で味わう、日本酒のごちそう時間。

旬の海の幸と発酵鍋を、日本酒で豊かに楽しむ。

今年もあとわずかとなったこの時期、冬の豊かな恵みを感じさせてくれる食材が食卓に並びます。中でも寒さが厳しくなるほどに美味しさを増すのが、寒ブリやタラ、カニ、カキといった冬を代表する魚介です。脂がのり、身が締まり、旨みが最高潮を迎えるこの時期は、まさに海の幸を心ゆくまで堪能できる絶妙なタイミングといえます。

寒ブリはとろけそうな脂とさっぱりとした白身の旨さが重なります。タラの身は淡白ですが奥深い旨みがあり、鍋に入れても形が崩れにくいのが特徴。旨みを凝縮したカニは、まさに冬の特別感の象徴です。ぷりっと肉厚なカキは、火を入れても縮みにくい“冬ガキ”ならではの美味しさが際立ちます。

こうした魚介をより美味しく引き立てるのが、日本酒の役割。タラちりの煮汁、ブリしゃぶのしゃぶ出汁、カニすきの出汁などに調味料として少量の日本酒を加えることで魚介特有の臭みが消え、それぞれの素材が持つ繊細な甘さや旨みが引き立ちます。

もちろん、燗酒あるいは冷酒として、ポン酢を垂らした生ガキや、ブリの刺身など、脂の強い魚介をさっぱりとまとめ、余韻をすっきりと整えるのも、日本酒本来の楽しみ方です。

寒ブリやカキは、発酵系アレンジの豆乳鍋がおすすめ。豆乳ベースの鍋は、別名“身体にやさしい腸活鍋”とも呼ばれています。アレンジには、味噌、塩麹、醤油麹、酒粕、キムチなどの発酵調味料や食材をお好みで加えるのがポイントです。ここでぜひチャレンジしたいのが、甘酒と豆乳の組み合わせ。

ほんのりと自然な甘みのあるクリーミーな味わいが特徴で、コクがあるのに重くない和テイストのポタージュ風鍋のような仕上がりに。さらに美味しくするために、味噌をほんの少し加え、中に入れる魚介の下ごしらえに塩麹や醤油麹でもみ込んでおけば、格段に旨みが増します。

ただし、カニは素材そのものの味が濃く、旨みが凝縮されているので、主張しすぎない昆布出汁が最適です。また、タラも淡白な身が特徴なので、発酵系調味料は抑え気味に豆乳の美味しさをシンプルに楽しむのがベストなのかもしれません。

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スッキリと調和のとれた味わい、しっかりとした押し味とキレのある力強いのど越しの本格辛口・本醸造酒。料理の味を引き立てる「食中酒」として最適です。

鍋と日本酒の組み合わせは、昔ながらの定番中の定番。鍋を囲んで熱燗をグイッとやるシーンは、日本ならではの懐かしい風景ともいえます。魚介の旨みが中心となる海鮮鍋はとくに、透明感のある淡麗辛口の日本酒との相性は抜群。冬の贅沢な旨みを引き立てながら、鍋料理の余韻をすっきりとまとめ、締めの雑炊へといざなってくれます。

寒さが一気に深まるこの季節、温かい鍋と旬の魚介、日本酒がもたらすやさしい時間を、どうぞゆっくりとお楽しみください。

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冬の湯を愉しむ。ゆず湯と酒風呂で学ぶ日本の知恵。

季節の香りと日本酒の保湿で、心まであたためる温活を。

冬の凍えた空気が一段と澄んだ夜に、湯船にそっと身を沈めるひととき。一日の疲れを解きほどく至福な時間になります。日本には季節に寄り添いながら湯を楽しむ文化があり、中でも冬至のゆず湯と日本酒を用いた酒風呂は、香りと温かさで心身をゆっくりと整えてくれる昔ながらの習慣として親しまれてきました。冬至にゆず湯に入る風習は“融通がきくように”という語呂合わせに由来し、厄払いの意味も込められた縁起の良い行事です。

ゆずの皮に含まれるリモネンという香り成分は湯気に乗って広がり、すっきりとした柑橘の香りで気持ちをほぐしてくれます。ゆずは軽く洗って汚れを落とし、爪楊枝で数か所穴を開けると香りが引き立ち、輪切りにする場合はネットに入れると果肉が散らばりません。ゆずの皮をそいで布袋に入れて浮かべる方法もあります。これは、刺激が少なく、敏感肌の方でも利用しやすいゆず湯の楽しみ方です。湯面に浮かぶ黄色い果実を眺めながら浸かる時間は、冬ならではの贅沢なひとときといえるでしょう。

一方、平安時代の湯治文化にもゆかりのある酒風呂は、日本酒に含まれるアミノ酸が肌をなめらかにするといわれ、夜の入浴時間を心地よいリラックスタイムへといざなってくれます。

一般的に、ほんのり香りが立つ1〜2合辺りが目安で、肌刺激も出にくくリラックス効果の期待大です。また、日本酒由来成分を配合という点で、酒蔵にとって得意分野でもあります。菊正宗の「酒と塩」は、白濁色の湯で冷えた身体をやさしく包み込む、”とろみ”のあるやわらかな湯ざわりが特徴です。

また、「美人酒風呂」はコメ発酵液(保湿成分)をたっぷり含んだ入浴料。コメ発酵液には肌にやさしい天然成分が含まれており、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かって、お肌に馴染ませるように入るのがおすすめです。4種の異なる香り・成分があるので、お好みに合わせてゆったりくつろぎのバスタイムをお過ごしください。

鮮やかな香りで寒い季節を味わうゆず湯としっとりと落ち着く酒風呂。休日の明るい時間にはゆず湯を、仕事終わりの静かな夜には酒風呂を選ぶなど、日常の中で湯を使い分けるのもおすすめです。入浴の際は、湯温は40℃前後のやさしい温度で、長湯になりすぎないようにすることが心地よさを高めるポイントです。

入浴後は保湿を忘れず、湯上がりの肌を丁寧に整えてあげることで、お風呂時間の満足感がさらに高まります。冬を迎えるたびに楽しみたくなる季節の湯文化。ゆずの香りに包まれるひとときも、日本酒のやわらぎに身をゆだねる時間も、どちらも日本の冬に寄り添ってきた大切な知恵です。寒さが深まるこの季節、湯の香りと温かさに癒やされながら、心も身体もゆっくりとあたためてみてはいかがでしょうか。

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