思わず共感する誰もが経験する“アノ現象”。

身近なアノ現象は、さまざまな分野の研究により解明されています。

今回は、日常で出くわす“アノ現象”のお話です。テレビを観ていて、よく知っているタレントなのにどうしても名前が出てこない。顔やイメージは浮かぶのにどうしても思い出せない。そんなとき、“ほら、あのドラマに出て、〇〇という女優さんと共演してた”“〇〇って誰だっけ”と、会話がどんどん記憶の深い沼に沈んでいきます。これは「舌先現象(TOT現象)」や「ベイカーベイカーパラドクス(“名前”より“職業”の方が記憶に残りやすいという逆説的な現象)」と呼ばれ、俗に「アレアレ症候群」ともいわれます。名前に限らず、頭の中に答えはあるのに言葉が出てこない状態です。

こうした日常の“?”は数多く存在し、それらを総称してアノ現象と呼びます。心理や行動を分析すると“あるある”はいっぱい。たとえば試験勉強や山積みの仕事を前に、つい部屋を片付け始めるのは「セルフハンディキャッピング」。失敗しても自分の心が傷つかないように、あらかじめ言い訳理由を用意する心の働きです。何かを取りに別の部屋に行ったのに目的を忘れてしまう「ドアウェイ効果」もよく知られています。似た言葉に「ドアノブ効果」があります。これは、部屋を出る直前に思わず本音を漏らしてしまうという現象です。

また「ゲシュタルト崩壊」は、少し前のドラマ「逃げ恥」で注目されました。同じものを見続けると脳が疲労したり、注意力が散漫になったりすることで、全体をまとめる機能が弱まるというもの。同じ漢字を何度も書いている際に、文字としての認識が薄れ、“あれっ、こんな字だった?”となるあの体験です。ユニークなのは40年前に話題になった「青木まりこ現象」。本屋に行くと急に便意をもよおすという彼女の投稿から生まれ、テレビ特番も組まれました。インクの匂いや自律神経、不安効果などの説は出ましたが、いまだに解明されていません。

これらの現象は決して特殊な人にだけ起こるのではなく、人類共通の“あるある”として誰もが体験していることが大きな魅力です。専門用語は難しくても、身近な体験に置き換えれば「ああ、それある!」と共感できるのです。

甘味が強いほど香りが際立って感じられるのは、脳が味覚と嗅覚の情報を統合している証拠とされています。これと似た体験が辛口の日本酒でも起こります。辛口=ドライという印象がある一方で、実際に口に含むと奥深い穀物の香りや吟醸香が鮮やかに立ち上がってくるのです。

これは辛口のキレが余韻を透明にし、香りを“解放”しているからであり、辛口だからこそ香りがクリアに際立つ。そんな一瞬の味わい体験もまた、私たちの脳が生み出す“アノ現象”。菊正宗の“うまいものを見ると、菊正が欲しくなる。辛口の菊正を飲むと、うまいものが食べたくなる”というCMの言葉は、その感覚を見事に言い当てているのかもしれません。

「菊正宗 上撰 1.8L」
居酒屋でお馴染みのキクマサ!
きもと造りは、現在酒造りの主流である市販の乳酸菌を添加する手法とは異なり、生きた乳酸菌の力を借り、力強い酵母をじっくりと育てる伝統の酒造りです。
スッキリと雑味がなく、しっかりとした押し味とキレのあるのど越しが特徴の、料理の味が引き立つ本流辛口酒です。

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菊と酒と長寿のこころ。重陽の節句を静かに祝う。

日本人の“老い”に寄り添う美意識。香り立つ一杯とともに、静かな時間を。

かつて“もっともめでたい日”とされた9月9日の重陽(ちょうよう)の節句。今ではその名を耳にする機会も少なくなりましたが、その静けさの中に、日本人が大切にしてきた美意識が宿っています。奇数(陽)の最大値である“九”が重なることから、古代中国では“もっともめでたい日”と考えられ、邪気を払う行事として発展。その風習は日本にも伝わり、“菊の節句”として平安時代の宮中に定着しました。

この日は、菊の花を愛で、香りを移した酒をいただき、長寿を願う風雅な一日。やがて重陽は、ひな祭りや端午の節句と同じく民間にも広まり、江戸時代には武家や町人の間でも祝われるようになりました。けれど現代、学校や職場も夏休み明けの慌ただしさに包まれ、気づけば、重陽はとても静かな節句になってしまったようです。しかし、この節句が伝えてきた精神をあらためて見つめ直してみると、私たち日本人が大切にしてきた“老いの美意識”が浮かび上がってきます。

重陽は、長寿を祝う日です。ただ年齢を重ねることを寿ぐだけではありません。歳を重ねたからこそ生まれる深みや豊かさ。

そこに価値を見出すのが、日本の“老い”へのまなざしです。俳句において“老い”は、単なる衰えではなく、移ろいゆく季節と調和する存在として詠まれています。季節ごとの落葉や霜に風情を感じるように、老いをしっかり認めて、そこに喜びを見つけ出す感性こそ、重陽の本質といえましょう。

この節句に欠かせないのが“菊”と“酒”です。菊は古来より邪気を払い、延命長寿をもたらす花として尊ばれてきました。なかでも“菊酒”は、菊の花びらを酒に浮かべて、その風情や香りを楽しみながら、一年の無病息災を願う風習です。酒は心を癒す力を持ち、人と人の関係をやわらかくほどきます。

この時期に出荷される、冬に搾った新酒をひと夏静かに熟成させた「ひやおろし」は、カドが取れて丸くなり、どこか穏やかな余韻と、静かな奥行きを感じさせてくれるのです。つまり、季節の移ろいと人生の円熟を閑かに解け合わせる風流な趣を実感させてくれます。重陽の節句は、そんな“深まりゆく季節”を味わう絶好の機会ともいえます。たとえば、“食欲の秋”と呼ばれるように、さんま、松茸、栗、銀杏、きのこ、脂ののった魚など旬の味覚が豊富です。

そんな秋が旬の食材を肴に、盃を傾けながら健やかに歳を重ねていることに感謝する。それは、自分自身へのささやかな、歳を重ねた“お祝い”でもあります。重陽の節句は、年に一度、自分と向き合い、静かに祝うための日。誰かのためでなく、自分のために丁寧に選んだ酒を、ゆっくりと味わってみてはいかがでしょうか。菊の名を冠する酒蔵より、そんな静かな祝いの時間をご提案いたします。

菊正宗 特撰 きもとひやおろし 720mL
冬に搾った新酒をひと夏熟成し、火入れせずに生詰めした、この時期にしか飲めない「ひやおろし」です。
辛口の「灘酒」は出来上がった直後は若々しく荒々しい酒質ですが、半年間熟成させると香味が整い、味わいも丸くなって酒質が格段に向上します。
菊正宗の「ひやおろし」は、生もと造りで醸した、キレのある押し味が特徴。
秋の味覚を引き立てます。

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9月7日はCMソングの日。音楽が広告を超える瞬間があります。

わずか数十秒で心をつかむ、日本のCM文化。その魅力と進化を紐解きます。

9月7日は「CMソングの日」です。1951年のこの日、日本で初めてCMソングがラジオから流れたことにちなんで制定。記念すべき第一号は、小西六写真工業(後のコニカ)の「僕はアマチュア・カメラマン」という曲で、広告と音楽の結びつきが本格的に始まった瞬間でした。

このCMソングの日をきっかけに、あらためて日本のCM文化を振り返ってみると、そこには独自の進化と美意識が見えてきます。まず注目すべきは、海外との違いです。欧米では“イメージを損なう”との理由で、映画俳優がCM出演を敬遠する傾向がありますが、日本では国民的スターから世界的俳優まで自然に登場します。海外から訪れた人々が、日本のテレビでアメリカの有名俳優が缶コーヒーや家電製品を紹介している様子に驚くのも無理はありません。

また、日本のCMは“短編映画”のような感動を与えることで知られています。わずか15秒から30秒ほどの中に、人生のドラマや家族の情愛を描き出し、その背後に流れる情感豊かな音楽が視聴者の心を揺さぶります。こうした演出は単なる宣伝を超えた映像芸術としても評価されることがあり、日本独自のCM美学ともいえるでしょう。

その一方で、日本ではCMソングがヒット曲として大きな成功を収めることは、もはや必然の事実。とくに80年代から90年代にかけて、CMソングが際立って華やかな時代でした。JR東海のキャンペーンで使用された松任谷由実「シンデレラ・エクスプレス」や、山下達郎「クリスマス・イブ」は、その映像と楽曲が一体となった世界観が話題を呼び、広告業界においても大きなインパクトを残しました。

同じくJALの夏の沖縄キャンペーンでは、米米CLUB「浪漫飛行」や上々颱風「愛より青い海」もCMをきっかけに大ヒット。とくに化粧品会社の季節キャンペーンソングは注目されました。桑名正博「セクシャルバイオレットNo.1」やラッツ&スター「め組のひと」、堀内孝雄「君のひとみは10000ボルト」、渡辺真知子「唇よ、熱く君を語れ」など、今なお愛される楽曲の多くが、CMをきっかけに世に広まりました。

こうした季節ごとの広告と異なる菊正宗のCMソングの特徴はロングランです。1975年から約30年間にわたり放映された菊正宗のCMでは、紫の風呂敷をシンボリックに“甘口が多いとお嘆きの貴兄に…”というナレーションとともに、西田佐知子の「初めての街で」が流れました。その後、映像が変わっても同じ曲が流れることで、伝統と一貫性を印象づける効果は高く、ブランドの歴史そのものを表現する役割を果たしたといえるでしょう。

CMの映像と曲調、そして歌詞のフレーズがぴたりと一致すると、その相乗効果は絶大です。まさに“ヒット曲はCMから生まれる”といわれた時代でした。何より、それまで気にも留めていなかったアーティストの楽曲がふと耳に残り、気づけば口ずさんでいた…そんな新しい音楽との出会いの場でもあったのです。CMは、商品紹介を超えて記憶や人生のワンシーンに結びつく存在です。9月7日のCMソングの日には、そんな“音と記憶の結びつき”に、少し耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。

「菊正宗 超特撰 嘉宝蔵 雅 1.8L」
菊正宗のCMとして登場していたのが、純米酒「雅」!
現代風にリニューアルして、現在も日本酒ファンに大変人気の商品です。
兵庫県三木市吉川・口吉川 「嘉納会」特A地区産 山田錦100%使用。
酒蔵を継承することは、先人達の想いを継承すること。山田錦のポテンシャルを高度に引き出す、嘉宝蔵・生酛の寒造り。最高の素材と変わらぬ造りが「百年変わらぬ味わい」を未来へと引き継ぎます。
奥深いうまみと余韻が綺麗に引き締まる、官能的なフルボディ。これが、菊正宗が誇るうまい辛口の王道。究極の「灘の生一本」です。

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寄席ブーム再燃の兆し!世知辛い世の中に、笑いの風が吹く。

ライブの魅力と、懐かしさの再発見が寄席文化を次の世代へと導いています。

落語の寄席が再び脚光を浴びています。生の話芸、観客との一体感、舞台と客席の距離の近さなど…これらすべてが、ライブ感を重視する現代の感性と見事にマッチしたのです。東京では新宿末廣亭や浅草演芸ホールなどの定席寄席が昔から根づいており、日常の中に落語文化が自然に溶け込んでいます。一方、関西では長らく常設の寄席が途絶えていましたが、2006年に天満天神繁昌亭が復活。

さらに2018年には神戸・新開地に喜楽館が誕生しました。新開地といえば、かつて“東の浅草、西の新開地”と呼ばれたモダンな演芸の街。大衆演劇や映画のメッカとして知られ、華やかな賑わいを見せていました。その面影が、いま寄席文化とともに息を吹き返しているのです。近年ではカフェやお寺、さらには銭湯までもが寄席の会場となるなど、小さなハコを活用した“街角寄席”が全国各地で増加中。とくに注目すべきは、経営難に陥った老舗銭湯がクラウドファンディングを通じて演芸場としての新たな価値を生み出しているケースです。銭湯は“入浴の場”であると同時に、“地域の記憶と交流の場”でもあります。落語が描いてきた庶民の暮らしと銭湯の空間は、どちらも昭和の香りと郷愁にあふれた民間の“文化遺産”。

若い世代には懐かしさの発見を、年配者には思い出の共有をもたらしています。世代を超えた交流が、自然と生まれているのです。

落語界の伝統もまた、世代を超えて受け継がれています。江戸落語には柳家、三遊亭、古今亭、林家などの大きな一門があり、上方には桂、笑福亭、月亭など、代々の芸風を守る流派が存在します。なかでも先代の名を受け継ぐ“三代目○○”といった襲名は、大名跡(だいみょうせき)と呼ばれ、その名にふさわしい芸を求められる重責を背負う存在。とはいえ、必ずしも実力順に継がれるわけではなく、入門順や一門の方針など複雑な背景があります。名跡を継がず、独自の芸風で頂点に立った名人たちも少なくありません。また、江戸と上方では噺のスタイルにも違いが見られます。江戸はキレ味鋭く粋な語り口、上方は情感豊かな人情噺。それぞれに異なる魅力が育まれています。演目の内容や登場人物も、地域の生活文化が色濃く反映されています。

古典落語であっても、演者によっては現代的な枕話で観客を引き込み、そのまま古典の世界へと誘う粋な技も。こうした細かい違いを見出すのも落語の醍醐味です。

かつて夏の寄席といえば怪談噺が定番でしたが、怪談は長尺で演技力も求められ、観客の“怖さ”の基準も変化したことで上演機会が減少。今は「青菜」「井戸の茶碗」など、涼やかな情景が描かれる噺が良くかかります。「青菜」に登場する“柳蔭(やなぎかげ)”は、夏の風情を象徴する存在。井戸で冷やされた甘みのある酒風の飲み物で、江戸時代にはみりんを水で割って楽しむ粋な夏の嗜みでした。今に置き換えると、菊正宗の「れもん冷酒」や「すだち冷酒」など、現代でも、その涼感と粋な風情は、冷酒の一杯にしっかりと受け継がれているのです。

れもん冷酒1.8L
日本酒に「瀬戸内れもん果汁」の他、「大分県産かぼす果汁」のまろやかな酸味と、「沖縄県産シークワーサー果汁」のほろ苦さを絶妙にブレンド。
飲みやすく、爽やかな味わいに仕上げました。

すだち冷酒1.8L
日本酒に爽やかな香りと酸味が特徴の「徳島県産すだち果汁」をブレンド。
軽快な口当たりと爽快なのど越しをお楽しみいただけます。
おすすめの飲み方は、氷に注いでお楽しみください。

寄席や落語が映し出すのは、時代を越えても変わらない人の暮らしと笑い。場所は変われど、言葉と間で紡がれるその世界は、これからもきっと多くの人の心を揺らし続けていくはずです。

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