のし紙/その三 熨斗(のし)と水引のヒミツ。

熨斗(のし)は縁起の象徴。
水引の紅白は誤解の産物。


のし紙の右肩についている飾りが
「熨斗(のし)」です。

日本では古来、新鮮な海の幸や山の幸を神様に供える風習がありました。
なかでも、鮑(あわび)は不老長寿をもたらすとされ、縁起物として祝いごとの儀式の際に一緒に贈りました。

その鮑(あわび)を伸して(引き延ばして)、干したものが「熨斗鮑(のしあわび)」です。
伸すことにより、“寿命や幸せ、喜びごとが引き延ばされ、ずっと続くように”という願いを込めていました。

熨斗(のし)の真ん中の黄色い部分が熨斗鮑(のしあわび)です。

ちなみに熨斗(のし)は祝いごとの象徴なので、弔事全般や病気見舞い(病気を長引かせないため)などには熨斗(のし)をつけないのが一般的です。
また魚介類や肉類、果物などの生鮮食品(生臭もの)を贈る場合も、“生臭”が重複するので、熨斗をつけないとされていましたが、古来とは食糧事情も変わり、こちらは熨斗(のし)をつけることの方が多いようです。

「水引」の起源については諸説あります。

飛鳥時代、遣隋使が隋への貢物に対して、献上品であることを意味する紅白に染めた麻紐を掛けたことに端を発するという説。

日本には古来、祭祀の折、神様へのお供え物にワラを束ねて結ぶという風習がありました。
それが、中国文化の影響を受け、宮中への貢物や貴族の間での贈り物に紅白の麻紐を掛ける習慣に変遷したとのこと。

また、室町時代に日明貿易が開始され、明からの輸入品の箱すべてに赤と白の縄が縛りつけられていました。
この縄は明が輸出品をほかと区別するために使用していたに過ぎないのですが、日本側がこの縄を贈答に使用する習慣と誤解。
それ以来、日本では贈答品に赤と白の紐をかけるようになったことが、贈り物に対する水引の起源ともいわれています。

 

水引の結び方には訳がある。

水引には、いくつかの結び方があります。
基本となるのは
「花結び/蝶結び」「結び切り」
「鮑結び(あわじむすび/あわびむすび)」
の3種類。
これらの結び方には、それぞれ理由があります。

■花結び/蝶結び

一般的な蝶結びの結び方。
解いて結び直すことができる結び方なので、
“何度あっても嬉しいこと”に使う結び方です。

〈使うシーン(慶事のみ)〉
長寿祝い、出産祝い、入学祝い、
内祝い(お祝いのお返し)、お中元、お歳暮など

■結び切り

固く結ばれて解くことが難しい結び方です。
“一度限り”“繰り返さない”
“二度とあってほしくない”
という意味が込められた結び方です。

〈使うシーン(慶事/弔事両方)〉
・慶事…結婚祝い、結婚引出物、内祝い(結婚祝いのお返し)、お見舞い(熨斗なし)
・弔事…お供え、ご仏前、御霊前、(通夜、葬儀の香典)、志、祖供養、満中陰志など

■鮑結び(あわじむすび/あわびむすび)

結び切りの一種で、
こちらも同様に“一度限り”
という意味が含まれていますが、
引っ張るほど固く結ばれて
解けなくなる結び方のため
“末永いお付き合い“
という意味もあります。
関東でも関西でも「結び切り」は
“一度限り”にしたいことに使いますが、
関西以西の地域では祝いごと全般で
「蝶結び」ではなく、「あわじ結び」が
広く使われているようです(地域差あり)。

〈使うシーン(慶事/弔事両方)〉
・ 「結び切り」と同様。
地域によっては「花結び/蝶結び」の役割も果たす。

 

水引の本数は奇数本数で用いることが基本。
これは古代中国の「偶数を陰数、奇数を陽数」
とする陰陽説からきています。
また5本に束ねたものを基本結びとするのも
古代中国の五行説の影響から。

5本を基本に、3本結びは5本の簡素化したもの、7本結びは5本結びをより丁寧にしたもの、婚礼関係に使われる10本結びは偶数と捉えるのでなく、奇数の5本を倍数にした二重陽結びで、豪華さを表すとともに十分に満ちたりているという意味合いを持ちます。

いろいろと組み合わせて使うことは面倒くさそうですが、それぞれに込められた意味を理解しておけば、それほど困難ではありません。

ある程度理解した上で、贈答品を購入したお店に相談することが、一番の近道といえるでしょう。

のし紙/その二 表書きは、おもてなしの気持ち。

表書きは、ひと言の手紙。


昔は物を贈る際に、紙を敷いた台に贈答品を載せ、贈り物名や数量、贈り主の名前などを書いた「目録」をつける習慣がありました。

いまは目録の習慣が簡略化され、先様に贈り物の趣旨を伝えるために、のし紙に「表書き」を書くようになったのです。

表書きは、贈る目的にあったいくつかの定例の言葉があります。
先様に対してどの単語がこちらの心情を表しているかの想いを馳せ、贈る気持ちにあった言葉を選びましょう。

これが“おもてなしの心”です。
もし言葉選びに迷ったら、お祝い事には「御祝」、お返しには「内祝」と書いておけば、失礼に当たりませんので、覚えておいてください。

それでは一般的な表書きを次にご紹介します。

【一般的なお祝い・お返し、お礼、お見舞いなどの表書き】

●新年の挨拶「御年賀、御年始、賀正」

●出産祝い「御出産祝、御祝」
⇔出産祝いのお返し「内祝/生まれた子の名前」

●入学祝い「祝御入学、御祝」
⇔入学祝いのお返し「入学内祝、内祝」

●卒業祝い「卒業御祝、祝御卒業、御祝」
⇔卒業祝いのお返し「卒業内祝、内祝」

●成人式のお祝い「成人御祝、祝御成人」
⇔成人祝いのお返し「成人内祝、内祝」

●ご長寿のお祝い「寿福、賀寿、祝御長寿」
⇔長寿祝いのお返し「内祝」
・還暦祝い/満60歳、数え61歳
「寿、御祝、祝還暦」
・古希祝い/70歳「寿、御祝、御古希御祝」
・喜寿祝い/77歳「寿、御祝、御喜寿御祝」
・傘寿祝い/80歳「寿、御祝、御傘寿御祝」
・米寿祝い/88歳「寿、御祝、御米寿御祝」
・卒寿祝い/90歳「寿、御祝、御卒寿御祝」
・白寿祝い/99歳「寿、御祝、御白寿御祝」
・上寿・百寿・紀寿/100歳
「寿、御祝、御百賀御祝」

●新築祝い「新築御祝、御祝」
⇔新築祝いのお返「新築記念、内祝」

●引越し挨拶「粗品、御挨拶」⇒お返しは不要

●お中元「お中元、御中元」

● お歳暮「お歳暮、御歳暮」

● 一般的なお礼「御礼、寸志、松の葉」

● 結婚祝い「寿、御結婚祝、御祝」
⇔結婚祝いのお返し「寿、内祝」

● 結婚式引き出物
「寿(新郎新婦両家の連名)」

● 病気・けがのお見舞い
「御見舞い、お見舞、御伺い、祈御全快」
⇔快気祝い、全快祝いのお返し
「快気祝、全快内祝」

● 記念品、賞品、粗品など
「記念品、賞品、粗品、景品」

併せて弔事の表書きも紹介しておきます。
万が一の際に、お役立てください。

【一般的なお祝い・お返し、お礼、お見舞いなどの表書き】

●葬儀(仏式)「御霊前、御香典、御香料」
⇔お返し「志、粗品、忌明志」

●葬儀(神式)「御霊前、御玉串料、御神前」
⇔お返し「志、偲草」

●葬儀(キリスト教式)
「御霊前、御花料、御ミサ料(カトリック)」
⇔お返し「志、粗品」

●法要(仏式)「御仏前、御供物、御供物料」
⇔お返し「志、祖供養」

●法要(神式)「御神前、御玉串料、御榊料」
⇔お返し「志、茶の子」

●法要(キリスト教式)
「御花料、御ミサ料(カトリック)」
⇔お返し「志、粗品」

のし紙/その一 のし紙には、心尽くしの礼儀を込めて。

そもそも、「のし紙」って、何。


梅雨が明けるのを待つかのように、
今年もお中元時期の到来です。

お中元などの贈答品を贈る際に、
のし紙をつけますが、
そもそも、のし紙って、
なぜつけるのかをご存知でしょうか?

贈る方の名前を先様に伝える役割がある薄い紙一枚ですが、こののし紙については、結構厚みのある理由や礼儀が秘められています。
のし紙は贈答品などの進物につける紙で、「熨斗(のし)」と「水引」が印刷されています。

古来よりの日本のしきたりとして、贈る品には表書きを書き入れた「奉書紙」をかけ、「水引」でくくり、奉書紙の右肩に「熨斗(のし)」を添えて贈っていました。

いまはこの慣習が簡略化され、すべて印刷されたのし紙が使われるようになりました。

ここでひとつ。
慶弔時に使われるのし紙の正しい名称は「掛け紙」。
慶事には“おめでたい”という意味があるのし紙が正しい呼び方で良いのですが、弔事やお見舞いの場合は、“二度と繰り返さない”という意味で、めでたさを表す熨斗(のし)はつけません。
のし紙の正式名称は「掛け紙」です。

ただし、慶弔時の両方で、通名ののし紙という単語が日常的に使われているのも事実。

逆に、若い店員さんなどの場合、掛け紙は通じないかもしれません。

ここは、知識として知っておくにとどめ、“お供え用ののし紙をつけて”という風に、柔軟に使ってください。

 

のしは内、のしは外?


近頃は、受け取った相手様に負担をかけたくないという配慮からのし紙をかけないという方も増えているようです。
時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、堅苦しい形式的なものではなく、先人たちの心尽くしの礼儀として、伝えていきたい大切な“おもてなし文化”といえるでしょう。

とくに目上の方やご年配の方への進物には礼儀を尽くした配慮が大切です。

さて、進物を贈る際に、「内のし」「外のし」で迷うことはありませんか?

内のしは、品物に直接、のし紙をかけて、それを包装紙で包むことをいいます。
それに対して外のしは、品物を包装紙で包んでからのし紙をかけることです。

かつて贈り物は直接、水引をかけて風呂敷に包んで持参するのが習わしでした。
いまのように宅配便などの配達システムが発達するより、ずっと前のお話です。
時代の流れに沿って、風呂敷にかわって包装紙が使われるようになっていきました。

現在、一般的には内のしがよく利用されています。それはのし紙が汚れてしまうのを防ぐ意味があるようです。

外のしは、持参して手渡す場合や、贈り物がたくさん先様に届きすぐに開けられないような状況を想定できる時に利用しましょう。