2027年“リニア新幹線”部分開業で、「お伊勢参り」をすると。

“リニア新幹線”で、東京-名古屋間は40分に。

夢のまた夢であった
“リニア新幹線”の開業が
間近に迫っています。

あくまでも開業予定ですが、
わずか3年後の2027年(令和9年)には、
東京(品川)-名古屋間
(線路延長285.6km)を平均時速500km、
40分で結びます。

さらに、2045年(令和27年)には、
東京-大阪間を最速67分で
移動できるというから驚きです。

ちなみに1964年(昭和39年)、
東海道新幹線が開通した際、
東京-大阪間を最高時速210km、
3時間10分で結ぶというニュースは
日本中を熱狂の渦に巻き込みました。

当時、このスピードは
世界最速の記録です。

それ以降、
車両改良などを重ねた新幹線は、
約60年の時を経た現在、
東京-大阪間を最高時速285km、
最速2時間22分で結んでいます。

そして23年後、
“リニア新幹線”の完全開通によって、
その時間距離は半分以下となり、
運賃を気にしなくて良いのであれば、
東京-大阪間は、もはや通勤圏
といっても過言ではありません。

また、東海道新幹線から西へ伸びる
山陽、九州、西九州各新幹線、
東京から日本海側へと伸びる
北陸、上越各新幹線、
東北方面へは東北、山形、北海道
各新幹線の路線網が張り巡らされ、
在来線と連携することにより、
日本の津々浦々にまで繋がります。

とくに私鉄等も含む、鉄道網における
時間の正確さには、
日本を訪れた外国人が舌を巻くほど。

一部遅延はあるものの、
概ね時刻表通りに
鉄道が運行されていることは
世界でも珍しいことのようです。

さらに、新幹線に関して、
人身事故などは別として、施設や設備、
車両の故障や整備不良などによる
脱線転覆事故や追突事故で
乗客が死亡した事例は一度もない
“安全神話”も世界に誇ることのひとつ。

これは“フェールセーフ(fail safe)”
という日本が誇るものづくり思想の
基本的な考え方のひとつです。

機械や装置はいつか必ず壊れる
ということを前提に、
故障時や異常発生時に、必ず安全側に
作動することで、絶対に人命を危険に
晒させないようにシステムを構築する
設計手法のことで、この思想は、
鉄道に限らず、工場などでも
実践されている安全な
信頼性設計ともいえます。

ものづくりにおいて、現在、
世界に押され気味の日本ですが、
品質や安全性では決して
世界に引けを取らないどころか、
世界を凌駕するほどのポテンシャルを
持っているのが“リニア新幹線”。

日本のV字回復の起爆剤になることを
願うばかりです。

200年前の「お伊勢参り」ブームのキッカケは、「東海道中膝栗毛」。

新幹線を利用すれば、さらに遠くの
観光地にまで移動できることで、
旅行シーンは大きく変わりました。

かつては移動だけで片道1日費やす
ことも少なくなかったものが、
新幹線を利用した時間短縮によって、
より多くの観光スポットを巡る
充実した旅を
満喫できるようになったといえます。

さて、
200年ほど時を巻き戻してみましょう。

1823年(文政6年)、
徳川11代将軍・家斉(いえなり)の
時代で、江戸時代後期にあたります。

この30年後の1853年(嘉永6年)は、
ペリー率いる黒船が
浦賀沖に来航した年。

この辺りから日本は近代国家へと
突き進んでいきます。

当時の旅行といえば、
江戸の庶民の誰もが憧れた
「お伊勢参り」です。

その火付け役となったのは
十返舎一九による
「東海道中膝栗毛」ともいわれています。

厄落としのために伊勢神宮に向かう
弥次さんと喜多さんの面白可笑しい
道中話に人々は魅了され、
「お伊勢参り」への憧れは募るばかり。

もちろん一般庶民の参詣が
許されるようになった鎌倉以降、
「お伊勢参り」のことは、
全国を渡り歩く修験道の行者や
旅芸人などから伝え聞き、
「お伊勢参り」をする庶民も
少なからずいました。

そして、「東海道中膝栗毛」の発刊が
キッカケで、にわかにブームが
巻き起こったということです。

江戸から伊勢へは、
片道約126里(504km)で、
約15泊程度の行程。

1日約30〜40km歩くことが連日
続くため基礎となる脚力は必要です。

すべて徒歩による移動なので
乗り物代は不要ですが、日数分の
宿泊費用と飲食代はかかります。

また、大井川などいくつかの川の
渡し賃も必要です。

宿場町に泊まるのが基本なので、
日没までに到着できた宿場によって
所要日数が異なり、素泊まりの“
木賃宿”と食事付きの“旅籠”では
宿泊費用も異なります。

当時の旅人が綴った道中日記によると、
旅籠代一泊200文、昼飯代は80文。

そこに川越えや渡船運賃、茶屋代金、
疲れたときに乗る駕籠や
馬の乗り賃など、1日平均300文。

片道15日として、往復9貫
プラス予備1貫と考えると、
「お伊勢参り」の費用はざっと
10貫というところでしょうか。

現在の貨幣換算では
10万円強くらいなのですが、
当時の“二八そば”が二×八=16文と
物価が安かったことを考慮すると、
「お伊勢参り」費用は、
約30万円程度かかったと思われます。

“リニア新幹線”を利用して
東京-名古屋間が40分、
名古屋から伊勢神宮まで近鉄特急で
1時間40分なので、片道2時間20分で
「お伊勢参り」ができる時代が
目前に迫っています。

朝、東京を出発して
お昼前には伊勢神宮…
わずか200年ほどなのに、ものすごく
便利な時代になったものです。