格言の“続き”に宿る、日本人の和やかな眼差し。

言葉の“その先”を知ると、世界の見え方が変わります。

物事を語るとき、私たちは昔から伝わることわざや格言を引用することがあります。しかし、その言葉には、あまり知られていない“続き”があり、日本人らしい価値観や美意識が記されていることに気づいているでしょうか。たとえば「井の中の蛙 大海を知らず」。狭い世界に閉じこもる視野の狭さを戒める、中国古典由来の故事です。ところが日本では、「されど空の深さを知る」と続けることもあります。広い海は知らなくとも、ひとつの場所を極めたからこそ見える景色があるという意味です。

“狭さ”を“深さ”へと転じるこの発想には、専門性の肯定や、不器用でも一途に打ち込む生き方への温かな眼差しが感じられます。日本流の美学によって、新たな意味が吹き込まれている好例です。「情けは人のためならず」は“情けをかけることはその人のためにならない”と思われがちなのですが、本来は「巡り巡って己(おの)がため」と続き、人への思いやりはやがて自分に返ってくるという教えを説きます。このようにネガティブな表現に救済のフレーズをセットしたものとして「残り物には福がある」や「雨降って地固まる」も、不遇の先に救いを用意する言葉です。日本のことわざには、単なる戒めではなく、どこかに希望の出口が設けられているように思えます。

名言や標語にも続きがあります。クラーク博士の「少年よ大志を抱け(Boys, be ambitious)」にも「この老人のように(like this old man)」と続く言葉があると伝えられています。また柔道の教えとしてよく耳にする「柔よく剛を制す」。これにも「剛よく柔を断つ」と続く言葉があり、武道としての両側面を説いています。「安全第一」という標語に続くのは、「品質第二、生産第三」という日本のモノづくりの哲学です。さらに「能ある鷹は爪を隠す」には「能なし犬は夜中吠える」と対句を添えることで、対比の妙を際立たせます。

そして実は、私たちが日々交わす挨拶の多くにも略されて今の形になっている言葉があるのです。「おはよう」は「お早くからご苦労様でございます」、「こんにちは」には「いい天気ですね」「お元気ですか」など場を和ませる自然な言葉が続き、「こんばんは」に続くのは「良い夜ですね」「お寒うございますね」など、相手の様子を伺う言葉が省略されています。さらに、「行ってきます」は「行って、必ず戻って参ります」、「行ってらっしゃい」は「行って、無事に戻っていらっしゃい」と、かつて旅が命がけだった時代の“無事に帰るという祈り”が込められています。

そして無事に再会できた喜びを分かち合う「ただいま(ただ今、無事に戻りました)」や「おかえりなさい(よく無事にお帰りになられました)」に結ばれます。「さようなら」も「左様ならば」という接続の言葉が語源だといわれます。普段使っていることわざなどに続く言葉を知ると、私たちの文化は単純な断定ではなく、余白や配慮を大切にしてきたことに気づかされます。言葉のその先にある思いを想像すること。それこそが、日本語の豊かさであり、日本人の心の在り方なのかもしれません。いつものひと言の奥行きを感じながら、今日の挨拶を、少しだけ和やかな気持ちで交わしてみたいものです。

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