混迷する環境問題。その一方で、イカナゴ不漁の原因に、驚きの事実が。

世界のあちらこちらで、環境問題に関する討論が喧しい現在。

以前より環境に関する
さまざまなテーマは
世界で話し合われてきましたが、
ここ最近、
その議論は白熱する一方です。

先頃のCOP25
(国連気候変動枠組条約
第25回締約国会議)で、
日本は温暖化対策を
講じていないという理由で
不名誉な“化石賞”を受賞。

これは、震災後に
全体の約4分の1を占めていた
原子力発電の代わりに
火力発電のウエイトを
増やさざるを得なかったことが
大きな要因で、化石燃料に頼らない
新たな代替エネルギーの
登場が求められます。

しかし、世界のCO2排出量については、
トップの中国と2位のアメリカだけで
全体の43%以上ものCO2排出量
という驚きの実情もあります。

またスウェーデンの女子学生の
各国首脳を前にしたスピーチは、
瞬く間に世界へと映像配信。

その鬼気迫る歪んだ顔と
礼儀のない強い言葉の
エキセントリックさばかりが際立ち、
伝えたいことの本質から
遠のくばかり。

さらに、
地球温暖化が懸念される一方で、
小氷河期の到来を示唆する学説が
一部で発表されるなど、
どれが正解で、どれが間違いなのか。

本当に持続可能な環境を
未来へと残すためには、国や組織、
団体などのそれぞれの“思惑”や、
主張する側の“都合のいいルール”
という壁を取り除いて、
膝を付き合わして
真剣に話し合うことが
大切なような気がします。

まずは、レジ袋を
昔の買い物かごに持ち替え、
ストローを使わないなどの、
目の前の環境保全から
スタートすることが大切なようです。

とはいえ、昨今の異常気象ともいえる
激しい気候変動の大きな原因として、
海水温の上昇は少なからず
影響があるのは事実。

台風の異常発生や暴風雨、水害などは、
この海水温の上昇が引き起こしている
との見解があります。

その影響は海洋生物の生態にも
大きな変化を及ぼしています。

「土用の丑」でお伝えしたように、
ウナギの漁獲量が激減している要因
のひとつが、この海水温の上昇。

海水温の変化で
微妙に海流の流れが変わるようで、
養殖用のシラスウナギは
産卵場所や回遊経路が
大きく変わっているとの研究結果も
発表されています。

それでなくても、ウナギは
もともと謎が多い魚で、
護岸に伴う河口堰の建設により
海水と淡水が混ざり合う
汽水域を減らし、さらに構造上、
天然ウナギの遡上を阻んでいます。

“土用の丑の日に
ウナギを食べる”ことは、
ものすごく贅沢なのかも
しれません。

 

環境適応力に優れたワカサギは、今年も旬の美味しさを届けます。

少し季節は早いですが、
春を告げる神戸の風物詩ともいえる
“イカナゴのクギ煮”が
絶滅の危機に瀕しています。

原材料となるイカナゴの新子(稚魚)
の漁獲量が1万から2万トン、
多い年は3万トン獲れていたものが、
平成31年度は899トンにとどまり、
長年その対策に
頭を悩ませているとのこと。

原因は前年夏の海水温が高いことで
産卵時に親も卵も死ぬ
と思われていましたが、
海水温が比較的低い翌年も
漁獲高は減少傾向となり、
謎は深まるばかり。

菊正宗 いかなご

そんな中、
昨年のシーズンを過ぎたあたりに
驚きの報道記事が
新聞に掲載されました。

“きれい過ぎる海”がイカナゴ不漁の
最たる原因だったようです。

かつて魚介類の宝庫であった
瀬戸内海は、
家庭や工場からの排水などにより
窒素やリンが過剰となり、
プランクトンが大量発生して
赤潮を頻発。

法令による排水規制を行ったことで、
水質が大きく改善した
という経緯があります。

その反面、魚介類の栄養素
とされる“栄養塩”が減り、
海苔の色落ちや
さまざまな漁獲減を招くことに
なったようで、故事にある
“水清ければ魚棲まず”を
地で行ったようなものです。

そこで兵庫県は、
“豊かで美しい瀬戸内海の再生”
を謳い、排水基準を緩和する条例改正
を行うことを決定しました。

まさに自然とのいたちごっこ。

上手くバランスが取れることを願い、
その結果が待たれるところです。

イカナゴのように
ある意味デリケートな魚が
環境に左右される一方で、
今がまさに旬の「ワカサギ」は、
環境適応に優れた魚で、
水質の悪化や低水温、
塩分濃度にも広い適応力があり、
各地の湖沼に移植されて
全国に分布域を広げています。

やはり、氷結した湖面に
ドリルで穴を開けて釣る
“氷上の穴釣り”は
冬の風物詩として有名で、
この釣りスタイルでは乱獲
とまでは行かないため、
しばらくは旬の美味しさを
楽しめそうです。

“氷上の穴釣り”は家族で楽しめる
体験型アクティビティー。

移動行程を楽しみ、
現地で釣りを楽しみ、
そして新鮮な味を楽しむ、
娯楽要素満載の
冬のエンターテイメントといえます。

氷結していない湖沼でも、
屋形船のようなドーム型釣り船、
また湖岸の温室ドームなど、
さまざまな釣りのスタイル
があります。

残念ながら温暖な関西エリアでは、
“氷上の穴釣り”はできませんが、
近くの温泉と組み合わせて
楽しむのも一興です。

釣り上げたワカサギは、
ぜひ現地でその新鮮さを味わい、
必ずクーラーボックスで持ち帰る
ことをオススメします。

淡白で繊細な味わいなので、
素揚げや天ぷらを
塩で食べるのが絶品。

天つゆに大根おろしを入れる
のも定番です。

醤油に浸けて焼いたり、
マリネや南蛮漬け、
甘露煮にしても
その美味しさを楽しめます。

竹中缶詰わかさぎ

淡白な味わいのワカサギには、
香り高い辛口の純米大吟醸を
冷酒でいただくのがオススメ。

絶妙な味と香りの
マリアージュといえます。

環境問題は、
未来につなぐ大切な課題です。

本来は自然のままにというのが
一番なのでしょうが、
これだけ都市化が進んだ今、
一方向に偏った主張ではなく、
バランスの取れた議論を
望みたいところ。

イカナゴの例にあるように、
キレイにすれば良い
という訳でもありません。

眉間にしわを寄せて
議論を戦わせるより、
美味しい料理と美味しい酒を
交わしながら、和やかに
未来を模索して欲しいものです。