「山田錦」が、“酒米(酒造好適米)”の王者たる由縁。

“酒造好適米”の「山田錦」の約8割は、兵庫県産。

日本酒の裏ラベルを
見たことはありますか。

原材料に表示されているのが、
純米酒は“米、米こうじ”、
吟醸酒、本醸造酒、そして普通酒の
多くが“米、米こうじ、
醸造アルコール”のみの
シンプルな表示に気づくはずです。

たったこれだけの原材料で、蔵元ごと、
ブランドごとの多彩でコクのある
味わいや馥郁たる香りの日本酒を
醸しているのです。

ここで良く耳にするのが、
醸造アルコールによる
アルコール添加について、
“出来上がった日本酒に
醸造アルコールを加えて
カサ増ししている”という誤解です。

実際には、醪(もろみ)を搾る際、
アルコール度数が低いと、
香りの成分が液体に溶け出さず、
酒粕に残ってしまうため、
高濃度のアルコールを加えることで、
香りの成分をお酒に溶け込ませるのが、
アルコール添加を行う主な理由です。

また、吟醸酒、本醸造酒における
アルコールの添加量は、
仕込み総米量の10%未満と
酒税法で厳格に制限されています。

旨い日本酒を醸造する条件の中で、
今回、注目するのは
“酒造好適米”として頂点に立つ
「山田錦」の魅力です。

日本酒醸造において、
“酒造好適米”の役割は、
ワインでいうところの
ブドウの品種にあたるのですから、
その重要性はわざわざいうまでもないと
いったところでしょう。

「山田錦」が誕生したのは、
1936年(昭和11年)。

市場に導入されてから86年経った今も、
“酒造好適米”として
その頂点に立っているのだから、
改めてそのすごさを思い知らされます。

「山田錦」の全国の生産量の
約8割を兵庫県が占め、
残りの2割を東北南部地域から
九州にかけて約30の都道府県で生産。

圧倒的な生産量を誇る兵庫県が、
「山田錦」の“テロワール”と
呼ばれる理由です。

“テロワール”とは、
“土地”を意味するフランス語の
terreから派生した言葉で、
ワイン、コーヒー、茶などの
品種における、生育地の地理、地勢、
気候などの優位性の高い地域を
表した言葉といえます。

 

「山田錦」の取引価格は、“酒造好適米”の中でも別格。

六甲山の北側の標高50~150mの山麓や
谷あいに段々に広がる
「山田錦」の産地は、
温暖な瀬戸内海式気候で
日照時間が長く、
降水量は少なめと言う
絶好の気候条件。

さらに、六甲山系が
温かい空気を遮るため、
登熟期(とうじゅくき/種子が次第に
発育・肥大すること)の夜温は低く、
日較差(にちかくさ/ 1日の最高気温と
最低気温の差)が10℃を越えるので、
稲の実りが良くなります。

また、この地域一帯は、
水分や養分の保持力の強い
モンモリロナイトという粘土質の土壌で
1メートルにまで伸びる稲の根は、
下層の水分や養分を
吸収する好適地です。

他の都道府県でも、
“酒造好適米”として「山田錦」の
良さを遺憾なく発揮してますが、
兵庫エリアで収穫される「山田錦」は
最大限にポテンシャルを
引き出しているといった
ところでしょうか。

また、全国約550近くの蔵元に
「山田錦」は届けられていますが、
菊正宗を始めとする灘五郷の
いくつかの蔵元は、品質の高い
「山田錦」が収穫される三木市や
加東市などの特A地区と
長年にわたる栽培契約を交わしている
組織があるため、ある意味、
門外不出ともいえる最高品質の
「山田錦」で醸造できる同郷の利が。

ちなみに、
菊正宗は兵庫県三木市吉川町
の特A地区の契約農家と「嘉納会」
という組織をつくって、
何十年も前から安定供給されています。

主食用米の全銘柄平均で
15,819円/60kgに対して、
“酒造好適米”の
取引価格はかなり高め。

「山田錦(産地不問)」が
25,000円~40,000円/60kg、
「五百万石(新潟)」が
約16,000円/60kg、
「美山錦(長野)」が
17,000円~18,000円/60kgの
取引価格である上に、
精米歩合で30〜50%以上も削るため、
自ずと価格は跳ね上がります。

また、特A地区に至っては
「山田錦」価格はさらに
高額取引となるため、まさに
“白い宝石”なのかも知れません。