柿の甘さは、渋柿にあり。ブランド品種の多さが、その需要を物語る。

柿の人気ブランドは甘柿の“富有”ですが、それに続くのは渋柿ブランド柿。

柿の年間の国内収穫量は
約22万5000トン
(出荷量約18万6000トン)、
輸入は
ニュージーランドの約7.5トンと
アメリカの約6.9トンだけなので、
ほぼ100%に近い国内自給率を誇る
果物のひとつに挙げられます。

ちなみに、主要生産国トップは中国で
、年間生産量約393万トン、
世界全体に占める年間生産量の割合は
約73%にものぼり、
日本とは桁違いの生産量に
驚きを隠せません。

柿の食べ頃ですが、一般的に、
柿の旬は10月から11月頃がピーク。

早生種なら9月半ば、
晩生品種は12月末頃まで
店頭に並びます。

人気品種ともなると、
収穫後に冷蔵保存され、
翌年2月頃まで
店頭に並ぶこともあるようです。

ただし、これは甘柿の場合で、
渋柿はそれより1ヵ月ほど前の
タイミングとなります。

柿は、甘柿と渋柿に大きく
分かれますが、詳しくは、
“完全甘柿”“完全渋柿”のほか、
種子が多くできると甘くなる
“不完全甘柿”、
種子の周りだけ甘く全体的に渋い
“不完全甘柿”と大きく4つに分類。

その4つの分類がさらに、
種の有無や早生晩生などの
特徴を持つブランド品種へと
細分化されます。

もっとも多くつくられているのが
“富有(ふゆう/甘柿)”で
柿全体の約25%を占めている
有名なブランド柿で
西日本を中心に栽培されています。

2位が“平核無(ひらたねなし/渋柿)”
で約17%。

“庄内柿”“紀の川柿”“おけさ柿”などと
地方によって呼び名が変わり、
炭酸ガスなどによって
柿渋を抜いて出荷されます。

3位は“刀根早生(とねわせ/渋柿)”で
約15%。

4位が甲州百目
(こうしゅうひゃくめ/不完全渋柿)
で生産量はグンと下がって約6%。

“蜂屋柿”“富士柿”“代白柿”“江戸柿”など、

その土地土地で名前が付けられています。

釣り鐘状のカタチをしているのが特徴です。

5位は“松本早生富有
(まつもとわせふゆう/甘柿)”。

名前の通り“富有”よりも
1〜2週間ほど成熟の早い甘柿。

渋みが非常に強いため
ほとんどが干し柿にされる
“市田(いちだ/渋柿)”、
“富有”と甘柿の双璧を成す
“早生系次郎(わせけいじろう/甘柿)”
“次郎(じろう/甘柿)”と続きます。

“富有はあごで食べ、
次郎は歯で食べ、
たねなしは舌で食べる”
といわれることがあります。

これは、“富有柿”は果肉が軟らかく、
“次郎柿”はやや硬めの果肉、
“平核無”はねっとりとした食感
をしている特徴を表した表現。

また、よく耳にする“あんぽ柿”は、
“蜂屋柿”“平核無”などの渋柿を
硫黄で燻蒸して乾燥させる
独特の方法でつくられた
福島県発祥の“干し柿”です。

 

渋抜きをした渋柿の糖度は、驚きの50度前後で甘柿の糖度を軽くしのぐ。

生産量トップこそ
甘柿の“富有”ですが、生つまり、
渋柿の需要が高いようです。

多くの渋柿は、
渋柿のエグい渋みを取ってから
の出荷となり、手間がかかりますが、
それを上回る美味さが
渋柿の魅力ということになります。

渋柿の渋みは、
どの柿にも含まれている
柿タンニンによるもので、
含まれる柿タンニンの量は
甘柿とあまり変わりません。

甘柿にも
柿タンニンは含まれますが、
熟成によって柿タンニンが
水に溶けなくなり、
渋みを感じることはありません。

一方、渋柿は熟成をしても
柿タンニンが水に溶け出し、
渋みが残ります。

渋柿は、その品種に適した方法で
渋抜きを行うことによって、
甘くなります。

代表的なものは乾燥させることで
渋を抜く“干し柿”が有名。

このほか、アルコールに漬けたり、
湯に浸けたり、
炭酸ガスで脱渋を行う方法、
なかにはりんごと
一緒の容器に入れて1週間ほど置く
渋抜き方法もあります。

また、意外な話ですが、
渋柿を天日干しにした
“干し柿”の糖度は50度前後
というから驚きです。

甘柿の糖度は16度前後で、
渋柿の渋みに
隠れている糖度は20度前後と、
もともとの糖度は渋柿の方が高く、
これを干すことで
水分と一緒に渋みが抜けて
糖度が50度にもなるのです。

甘柿を干しても
渋柿ほどの糖度は得られない
というから不思議です。

素人考えで、
渋柿より甘柿の方が甘い
と思っていましたが、
事実は異なったようです。

そして何より、
科学的な根拠もないなかで、
渋柿の渋みに果敢に挑んで
その渋さを克服し、
その先にある甘味を発見した
先人たちの努力は
計り知れない偉業といえます。

私たちの文化は、
こうした名もない方々の
努力の積み重ねで成り立っている
ような気がします。

次も柿に関するコラムを紹介します。