先人たちの伝統を未来へと繋ぐ「日本酒の日」。“ひやおろし”が目玉です。

なぜ、「日本酒の日」は、10月1日なのでしょうか。

10月1日が「日本酒の日」
と制定されたのは、
1978年(昭和53年)のことで、
今年、2021年(令和3年)で43年目。

この記念日を制定した
日本酒造組合中央会の
ホームページには、
“日本の國酒である日本酒を
後世に伝えるという思いを
新たにするとともに、
一層の愛情とご理解を
という願いを込めて、
1978年に日本酒造組合中央会が
「10月1日は日本酒の日」
と定めました”という
制定にあたっての意義が
掲載されています。

現在、日本酒の酒造年度は、
7月1日を開始日から
翌年6月30日なのですが、
なぜ、「日本酒の日」が10月1日に
制定されたのでしょうか。

1964年度(昭和39年)以前は、
その年に収穫された新米で
酒造りを始める10月を
1年のスタートとして、
翌年9月30日までが酒造年度でした。

日本酒の蔵元では、
昔から年度初日の10月1日を
「酒造元旦」として祝い、
神社に参拝して1年の醸造安全を
祈願したといいます。

そうした先人達が
大切に守り続けてきた伝統の日である
“10月1日”を、「日本酒の日」
という特別な記念日に制定して、
後世へと語り継ぐことの決意が
込められているともいえます。

また、別の理由として、
干支の“酉(とり)”が、
この「日本酒の日」制定に
深く関わっているとのこと。

“酉年”は12年に一度巡ってくる
十二支のひとつであるだけでなく、
1年の各月に割り当てた場合、
10月を指します。

ちょうどこの時期、
秋の五穀豊穣に感謝して
秋祭りなどを開催して、
神と酒を酌み交わす習慣が
ありました。

また、10月は旧暦の“神無月”で、
新酒を醸す月という意味で
“醸成月(かみなしづき)”
とも呼ばれ、古くから
“10月は日本酒の月”
と考えられていたようです。

余談ですが、
“酒”という漢字の部首は、
“氵(さんずい)”へんではなく、
つくりの“酉(ひよみのとり)”。

この“酉”は、酒壺を表した
象形文字から生まれたもので、
“醸”“酔”“醪”“酎”“酌”
など、酒に関連した漢字には、
この“酉”が使われています。

こうしたさまざまな理由によって、
10月1日が「日本酒の日」
と制定されました。

 

「日本酒の日」を大きく広めたのは、各地方自治の「乾杯条例」。

「日本酒の日」制定以降、
10月1日には、
鏡開き、振舞酒などの行事が、
関係団体を中心に行われてきました。

とはいうものの、
式典を中心としたもので、
大きなイベントというよりは、
厳かで神聖な行事が
主目的だったことが伺い知れます。

その静かな行事を
一歩先に進めたのが、
2004年(平成16年)の
「日本酒で乾杯推進会議」
の発足です。

日本酒造組合中央会の
ホームページには、
“古来、日本酒は神様にお供えする
神聖なものとされてきました。

「乾杯」には、神様の前で
人々が心をひとつにする願いが
込められています”
との記述があります。

”日本酒で乾杯”を
キャッチフレーズに、
日本酒を通して
日本文化を広く啓発することを
目的とした積極的な活動は、
やがて地方自治体が公布する
「乾杯条例」の制定へと
繋がっていきました。

2013年(平成25年)に
京都市で「京都市清酒の
普及の促進に関する条例」が
施行されたのを皮切りに、
このニュースが注目を集め、瞬く間に
このユニークな条例は全国へと拡大。

それぞれの地方特産の
酒の消費拡大を目的としたもので、
条例という名がついているものの、
拘束力や罰則はなく、
あくまで普及促進を促すものです。

その多くは日本酒ですが、
ワインやビールなどでの
乾杯も含める地域もあり、
現在、140を超える地方自治体で
「乾杯条例」が施行されています。

また、全国各地で、
「日本酒の日」とその前後
9月25日(土)~10月3日(日)の9日間を
“日本酒で乾杯 WEEK”とし、
“全国一斉日本酒で乾杯!”と
銘打った今年で7回目となる
一大イベントを開催。

現在、新型コロナ禍により、
その規模は縮小していますが、
オンラインで乾杯などの
企画が行われることで、
海外の日本酒ファンも参加する
イベントスタイルなど
新しい取り組みも広がっています。

「日本酒の日」の目玉は、
なんといっても、
9月9日に解禁されたばかりの
“ひやおろし”。

寒い時期に醸造して、
ひと夏熟成させ、
秋口に入って、
ほど良い円熟味をおびた
“ひやおろし”は、
格別の味わいです。