令和初の「蔵開き」、新酒「しぼりたて」の人気も上々。

新酒「生酛しぼりたて」で、今年のお酒の出来を計り知る。

丹波杜氏の技に支えられた
“寒造り”によるお酒の仕込みも、
そろそろ終盤を迎えるこの時期、
令和初となる「蔵開き」が、
2月15日(土曜日)に
開催されました。

今年で第15回目を迎える
「蔵開き」の会場は、
普段立ち入ることのできない
嘉宝蔵構内や
隣接する菊正宗酒造記念館。

曇天ながら雨が降ることもなく、
多くの人で賑わいました。

蔵開きにご参加いただいた
多くのお客様のお目当ては、
やはり新酒「生酛しぼりたて」の
出来映え。

新酒「生酛しぼりたて」の
振舞酒には、毎年のことながら
人垣ができる盛況ぶり。

新酒「生酛しぼりたて」は、
仕込みを終えて
醪(もろみ)を搾った後、
火入れ(低温加熱殺菌)を行い、
そのまま瓶詰めにしたもので、
その年のお酒の出来を
計り知ることができる
といわれています。

まさに“今が旬”のしぼりたてらしい
、フレッシュな荒々しい味わいと
鮮烈な香りが癖になるお酒です。

ちなみに、一般的な日本酒は、
搾った後に火入れを行って
数ヶ月間貯蔵。

熟成させることで、
お酒の角がとれて
まろやかな味と芳香をまとった
深いコクを醸し出します。

だからこそ、
新鮮さを味わえるのは、
この時期だけのお楽しみなのです。

それに続いて人気だったのが、
「百黙」の3種類飲みくらべ。

兵庫県三木市吉川特A地区産の
山田錦を100%使用した
特別限定酒で、
丁寧に醸造しているがゆえ
量産ができず、
兵庫県下の料飲店や酒販店を中心に
展開されているものです。

最近になり、東京都内での流通を
ようやく開始した希少なお酒で、
これを飲みくらべられる
絶好の機会ということもあって、
菊正宗ファンにとってはこの上ない
ひとときだったようです。

また、軒を連ねる
“吉川町うまいもん屋台”“大起水産
・生本まぐろの寿司と刺身”
をはじめ、粕汁、おでん、
たこ焼きの屋台など、
旨い酒にピッタリと合う
旨い肴が盛りだくさん。

構内全体がほろ酔い気分に包まれ、
さながら、“日本酒バル”のような
雰囲気を醸しています。

構内一角に設けられた舞台では、
匠の技が光る“菰巻き(こもまき)”
の実演をはじめ、
丹波杜氏による“酒造り唄”の披露や
昭和レトロなちんどん屋“華乃家”の
パフォーマンスなど、
陽気なほろ酔い客を
もてなす演目が目白押し。

イニエスタ選手が菊正宗アンバサダー
に就任したことで実現した
ヴィッセル神戸とのコラボ企画では、
福引きやイニエスタ等身大パネルの
フォトスポットを設置。

また、嘉宝五番蔵の見学にも
多くのお客様が参加されました。

普段静かなこの場所が
数多くのお客様で賑わう、
年に一度のひととき。

地域交流の役割を
十分に果たせたようです。

もともとの「蔵開き」は、文字通り“蔵を開く”大切な歳時。

さて、「蔵開き」の歴史は古く、
武家屋敷で甲冑を納めた
長櫃(ながびつ)などを開く
“具足開き”が行われ、
町家や商家では文字通り
蔵を開く“蔵開き”や、
商人が帳簿を新しく綴じる
“帳祝い(ちょういわい)”
が行われました。

この日は“鏡開き”の日
でもあったので、鏡餅を下げて、
家族や使用人と一緒に
雑煮を食べたとされます。

一部では、蔵の神に供える地域も
あったようです。

この「蔵開き」の風習は、
もともと1月20日に
行われていたのですが、
江戸時代の第3代将軍・徳川家光の
忌日(きにち)ということで、
1月11日に改められました。

松の内を過ぎた年初の吉日に
「蔵開き」を行う
地域もあるようです。

農家でも“田打ち正月”“鍬始め”
などの儀礼が行われる
大切な日に位置づけられていました。

その一方、地域によっては、
長く続く酒蔵の「蔵開き」の歴史
もありますが、
一般的に酒蔵の「蔵開き」は、
わりと最近になってからのことです。

これは微生物による醗酵
という工程を経る酒造りの蔵に、
ほかからの雑菌の持ち込みを懸念
したのと、神聖な現場に
一般人が立ち入るのを
禁じたこともあります。

しかし近年になり、酒蔵の衛生管理が
科学的に行われるようになり、
地域交流の意味もあって、
「蔵開き」といえば、この時期に
全国的に開催される日本酒の「蔵開き」
を指すようになりました。

生活スタイルが変化し、蔵があるのは
地方都市の旧家くらいのもの。

そんな時代の変化の中で、
“蔵”を有する酒造は、
これから先ずっと「蔵開き」の伝統を
続けていくことになるでしょう。

そんな思いがよぎるほど
盛況だった今年の「蔵開き」でした。