「五月雨」「五月晴れ」など、叙情的な梅雨の別名。

令和2年は、遅い梅雨入りで梅雨明けは平年並み。

2020年(令和2年)の梅雨予想を
ウェザーニューズが発表しました
(2020年5月19日現在)。

すでに梅雨入りが伝えられている
沖縄県や奄美地方を除く
九州から東北にかけたエリアについて
、今年の梅雨入りは6月中旬、
梅雨明けは7月中旬から下旬で、
とくに九州、四国エリアは
平年とくらべて
1週間ほど遅くなる見込み。

平年より遅い梅雨入りで、
梅雨明けが平年通り
ということなので、
遅くなった分だけ
梅雨の期間は短くなります。

また、梅雨期間の雨量は東北、
北陸が平年並み、
それ以外のエリアでは
平年並みもしくは
少し多くなると予想。

とくに、7月中旬に
九州から関東甲信越にかけての
広いエリアで梅雨前線が停滞する
との予想もあり、
大雨への警戒が必要です。

この時期、忘れてはならないのが、
衣替えです。

暦の上では6月1日が
“衣替えの日”とされています。

これは明治時代になり、
軍人や警察官、役人の制服を
洋服と定め、
夏服と冬服の衣替えの時期も
一緒に制度化したことに由来します。

新暦の6月1日から9月30日が夏服、
10月1日から翌年5月31日が冬服
と定められ、
これが学生服にも適用され、
やがて一般庶民にも
この習慣が広まったとされています。

この節目となる日が
“衣替えの日”として
暦に載るようになりました。

今年は、
新型コロナの感染拡大を防ぐため、
政府が全国の小中高校に
3月2日からの臨時休校を
要請したことで、
卒業式、入学式が執り行われない、
今までにない春を迎えました。

とくに新入学生は、
真新しい制服に袖を通して
登校することがないまま
“衣替えの日”を迎えることとなり、
夏服からの新学期となります。

 

梅雨を表した「五月雨(さみだれ)」「五月晴れ(さつきばれ)」。

漢字で「梅雨」と表記するのは、
“梅の実が熟す頃”
というのが定説ですが、
“黴(カビ)が生えやすいことから
「黴雨(ばいう)」と呼ばれ、
同じ音の「梅雨」に転じた”
“この時期は毎日雨が降るため、
「毎」の字から「梅」という字が
当てられた”
など諸説あることを
以前のコラムでお伝えしました。

昔は「梅雨」を
「五月雨(さみだれ)」
と呼びました。

現在の梅雨の時期は、
旧暦の5月頃にあたるため
“五月”の表記が
当てられたものです。

この「五月雨」を使った有名な俳句が
松尾芭蕉の「奥の細道」に
納められています。

“五月雨を 集めて早し 最上川”
ですが、ご存知でしようか。

もとは“集めて涼し”で、
梅雨の時期に川の流れとともに
涼しい風を運んでくる
最上川の豊かさを表現した
松尾芭蕉ですが、
実際に急流の最上川下りを体験し、
“涼し”を“早し”に改めて、
最上川の豪快な激しさを
表現し直したとされています。

また、「五月雨」と対で
よく使われるのが
「五月晴れ(さつきばれ)」
という言葉で、
もともと長雨が続く
「梅雨」の期間に、
時折、顔をのぞかせる
晴れ間のことを指していました。

ところが、最近は、
「五月晴れ(ごがつばれ)」
と読んで、
5月初旬の良く晴れた空模様を表す
言葉として使われることの方が
多く、気象庁では、
5月の晴れの日を
「さつき晴れ」と呼び、
梅雨の晴れの日を
「梅雨の合間の晴れ」と呼ぶように
取り決められています。

字面を考慮して時代に適応した
言葉の変換のひとつの例といえます。

理由は定かではありませんが、
「五月雨」「五月晴れ」のように
“五月○○”という言葉が多くあります。

「五月雨」から派生した
「五月雨式(さみだれしき)」は、
梅雨の雨のように、
物事が絶え間なくだらだらと長く続く
様を表した言葉です。

「五月闇(さつきやみ)」は、
梅雨時期の夜の闇を表しています。

このほか
「五月躑躅(さつきつつじ)」
「五月蝿い(うるさい)」、
新しいものでは「五月病」
などが挙げられます。

「梅雨」に降る雨は、
長く続く鬱陶しさや
ジメジメとした湿気で
敬遠しがちですが、
農作物にとっては
豊作を願う“恵みの雨”ともいえます。

決して大雨が続くことなく、
適度に生活を潤してくれる
雨を願うばかり。

私たちはもう、今年1年分の苦労を
すでにしているのですから。