熟した香りと味わいに魅了される、日本酒の楽しみ方。

日本の高齢化の背景にある、“高い医療技術”と“長寿”。

高齢化社会が叫ばれて久しい
日本ですが、世界的に見て、
日本の高齢化がどの程度
なのかご存知でしょうか。

高齢化率は、総人口に占める
65歳以上人口の比率で表されます。

残念ながら、
日本は世界第1位の高齢化先進国。

2018年の
日本の高齢化率は27.47%。

第2位のイタリアが23.31%、
第3位のポルトガルが21.89%、
第4位のドイツが21.66%、
第5位のフィンランドが
21.61%と続きます。

高齢化社会の原因はいくつか
ありますが、最たる要因は少子化。

戦後のベビーブームで生まれた
団塊世代が高齢者となり、
少子化と相まって
その人口差が激しいことが
挙げられます。

また、医療技術の進歩による
平均寿命が伸びたことも
高齢化社会へと拍車を掛ける
要因のひとつです。

日本は世界的に医療技術水準が高く、
公的な医療保険制度も
世界トップレベル。

「世界保健統計2018」によると、
日本の平均寿命は84.2歳と
世界第1位。

第2位のスイスが83.3歳、
第3位のスペインが83.1歳、
第4位がオーストラリア、
シンガポール、フランスで
82.9歳と続きます。

高齢化社会の背景には、
“長寿”という喜ばしい
現実も含まれているのです。

高齢化社会が抱える問題として、
定年を迎えて年金受給者となった
高齢者を、減少傾向にある現役世代
が支えることとなり、負担は自ずと
増えていくことが挙げられます。

増える高齢化人口が
活躍できる社会の実現も、
解決策のひとつといえます。

昔は“60歳定年”を迎えると
社会の第一線からリタイヤして
老後生活に…というのが一般的
でしたが、いまの60歳は
まだまだ元気で、社会から退く
には惜しい人材の宝庫。

長年にわたって培った
円熟味のある知識や技術、
経験則を“年齢”という壁で
塞いでしまうのは
もったいないお話です。

支えられる側が、支える側として
働ける社会となることが、
本来の“働き方改革”
なのかも知れません。

熟成酒が醸す、日本酒の温故知新。

日本酒にも「熟成酒」と呼ばれる
円熟した古酒があります。

日本酒の場合、酒造年度が7月1日から
翌年6月30日の間に製造・出荷された
ものを「新酒」と呼び、
その期間を過ぎたものは
「古酒」として扱われます。

さらに、翌々年以降に出荷されるもの
は「大古酒」に位置づけられます。

日本酒の世界では、
約1年が現役世代といったところです。

1695年(元禄8年)に出版された
「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)
」に、“甕(かめ)や壷に入れて
三、四、五年も経った酒は
味濃く香美にして最も佳なり”
という長期間の保存で
熟成した古酒が嗜まれていた
との記録が残っています。

“生類憐れみの令”で有名な
第5代将軍徳川綱吉の
江戸時代前期の頃にさかのぼります。

最近、「熟成酒」が
注目を集めています。

「熟成酒」は醸造や貯蔵の方法、
熟成年度で、個性が表れ、
さまざまな表情を見せてくれます。

日本酒の大敵は光と熱。

光の当たらないタンクで静かに
低温貯蔵し熟成させるのが
一般的な「熟成酒」。

熟成させている間に
アミノ酸と糖が結合する
アミノカルボニル反応を起こし、
色合いも黄金色や琥珀色、
さらにはルビー色に近い赤色
などに変化します。

吟醸酒を長期冷蔵貯蔵した場合は、
もともと成分に含まれている
アミノ酸や糖の含有量が少ないため、
色の変化が緩やかです。

色合いの変化と同時に
香りも味もまろやかに変化します。

とくに醸される熟成香は、
その濃度によってバニラの香り、
ハチミツの香り、
焦げたカラメルの香り、
カレーの香りなど、
そのたとえは複雑です。

一般的に搾った直後の日本酒は
フレッシュ感と荒々しい口当たり
が同居しています。

それが熟成によって
まろやかになります。

火入れを行えば、雑菌とともに
酵母も死んで醗酵は止まるはずですが
、熟成による味や香りの変化は、
確かに実感できます。

長期保存によって
どのように熟成が進むのか
というメカニズムは、
ハッキリと解明されていません。

アルコールがむき出しの
「新酒」のエタノールが、
「熟成酒」になると
水に包まれた状態となり、
香り、味がやわらかくなるのでは
という仮説が有力です。

菊正宗では、氷温倉庫で
じっくりと三年以上熟成させ、
熟練の境地を思わせる円熟味と
まろやかさを醸し出したものを
「秘蔵酒」と呼んでいます。

その芳香の高さ、きめこまやかさが、
より一層と冴え、深い味わいを
お楽しみいただけます。

「純米大吟醸 秘蔵酒三年貯蔵」や
「秘蔵熟成酒」など、
秘蔵の熟成をお楽しみください。

「熟成酒」の楽しむ嗜好は、
まさに温故知新。

円熟味を増した、
そのバランスの“妙”で、
新しい日本酒の可能性を
再発見してみてください。