夏の終わりとともに、“日本酒が美味しい季節”です。

感傷的な“秋”の感覚は、なぜ?

うだるような夏の暑さでしたが、
2019年の夏は、
一部のエリアを除いて
全国的な猛暑とまではいかず、
“平年並み”もしくは
“やや高温”どまり。

暑さよりも、お盆休みを
直撃した大型台風が、交通網を
混乱させた“夏”となりました。

とはいえ、
残暑はしばらく続きそうで、
秋の足音を聞くのは、
しばらく先の話になりそうです。

高度経済成長期とされる
1960年代半ば〜1970年
にかけて、所得水準は向上し、
戦後わずか20年で復興を遂げ、
世界第2位の経済大国へと
成長しました。

当然のことながら、
消費も大幅に拡大し、
“車 (CAR)”、
“エアコン (COOLER)”、
“カラーテレビ (COLOR TV)”は、
その頭文字をとって
「3C(新・三種の神器)」
と呼ばれ、人々のくらしそのものを
大きく変えていきました。

なかでも、カラーテレビは
1964年(昭和39年)に開催された
東京オリンピックを機に一挙に普及。

もっとも普及が遅れたのは
エアコンでしたが、
1960年はほぼゼロに近かった
エアコン普及率も、
1970年頃から上昇しはじめ、
2012年には約90%に到達。

いまでは、
夏のくらしに欠かせない
家電のひとつになりました。

人々は、暑い夏から解放されたのです。

ところで、夏の暑さも和らぎ、
エアコンの利用機会も減り、
肌涼しい秋に近づくにつれ、
物悲しい気持ちが
頭をよぎることはありませんか。

この感覚は、日照時間が
大きく関わっているようです。

もっとも昼の時間が長い
“夏至(6月22日)”の日の出は
4時46分で、日没は19時16分。

それから約2ヵ月経った
現在の日の出は5時29分で、
日没は18時33分
(いずれも神戸での時間が参考)。

日照時間差は約1時間30分もあります。

秋が近づくにつれて
気温が徐々に下がることも
影響を与えているとのこと。

この夏から秋へと移り変わる変化を
肌で感じはじめる時期に、
その先にある厳しい冬の訪れを
敏感に察知しているのでは
との説があります。

また、
“楽しかった夏が終わってしまう”
という感覚も、「感傷的な秋」
という印象につながっている
ものと考えられています。

これは「サザエさん症候群」
にも似た感覚でしょうか。

日曜日の夜に、
“また明日から学校に行く
(仕事に行く)”という
現実に直面して、
憂鬱になる感覚といえます。

天高く馬肥ゆる“秋”を満喫。

かといって、
秋の訪れは物悲しいばかり
ではありません。

昔なら、冬支度の心づもりをして
厳しい冬に備えましたが、
現在は、暖房設備が完備された
屋内で冬を迎え、
冬の食糧や衣服の確保も容易な時代。

やがて訪れる冬のことなど
心配することもありません。

“食欲の秋”“芸術の秋”などに
代表される「○○の秋」を
楽しむ絶好の機会と考えても
いいのではないでしょうか。

やはり秋といえば、
「日本酒の秋」。

きもとひやおろし本醸造

9月9日の重陽の節句に解禁となる
「ひやおろし」を皮切りに、
春に仕込んだ旨い酒が
続々と登場します。

そして、旨い酒とともに
秋を堪能させてくれるのが、
この時ばかりの旬の味覚。

夏の暑さも癒え、
旺盛な食欲が増進する秋ですが、
これには脳内で働く、
とある神経伝達物質が
大きく影響を与えている
という研究成果があります。

その物質がセロトニンで、
別名“幸せホルモン”
と呼ばれています。

このセロトニンには、
満腹感信号を発信して、
食欲を抑える働きがあります。

この成分は、
浴びる日の光の時間と比例して
分泌量が増減するという性質があり、
夏に分泌量が多かったセロトニンが、
日照時間が短くなる秋に
分泌量が減り、食欲が秋の深まり
とともに増進するメカニズム
となっています。

美味しい旬の味覚があふれ、
“食べたい”という信号が
体内に醸成される「秋」。

これはもう、料理にあった
旨い酒とのマリアージュを
楽しむしかありません。