今年の梅雨はちょっと早めの予想。梅雨と深い関係にある田植えの時期は?

天気予報がなかった江戸時代。
歳時記と肌感覚が頼りの農作業を行っていました。

春の陽気に包まれた
ゴールデンウイークも終わり、
ひと月後には全国的に梅雨入り
というのが一般的な季節の流れです。

しかし、昨年は九州、中四国は
観測史上最早となった
約ひと月早い梅雨が訪れ、
近畿以北は逆に1週間遅れという
天候不順な状態でした。

今年は梅雨前線が早めに
日本列島を北上すると予想され、
梅雨入りと梅雨明けが
早い可能性がありそうな気配が。

しかし、
この時期の気象予想は信頼性が低く、
地域によってバラツキが出やすい
不安定なものなので、
最新のお天気情報を確認する
必要はありそうです。

日本の天気予報の歴史は、
1884年(明治17年)にまで遡ります。

この年に、日本で最初となる
毎日3回の天気予報が
発表されるようになりました。

約1カ月の長期予報が実施されたのは、
58年後の1942年(昭和17年)
になってからのこと。

それ以降もずっと
“天気予報と宝くじほど
当たらないものはない”と
いわれ続けてきましたが、
近年は、気象衛星“ひまわり”や
国内約1300カ所の気象観測施設
“アメダス”、精度の高い
観測データ統計などのおかげで、
観測精度も格段に向上しています。

農業立国として
歴史を重ねてきた日本にとって、
梅雨と田植えは、
かなり密接な関係にあります。

田植え後の苗の成長を促すのが、
梅雨の“恵みの雨”なのです。

だからこそ、天気の長期予報は
とても重要な情報のひとつ。

天気予報がなかった江戸以前の時代、
空の色や雲の形、風向き、
肌に感じる湿気、さらに
生き物の様子などを元に
天気を予測し、
“朝焼けは雨、夕焼けは晴れ”
“山に笠雲がかかると雨が降る”
“遠くの音が聞こえやすくなると雨”
“ツバメが低く飛ぶと雨”
“カエルが鳴くと雨”などの
天気にまつわることわざで
語り継がれてきました。

また、歳時記も天気を知る
大きな手段のひとつです。

例えば、雑節の“八十八夜”。

茶摘みの目安の日として有名ですが、
稲の種蒔きの準備をする
時期でもあります。

立春(2月4日)から数えて
88日目の5月2日。

また、二十四節気の
“芒種(ぼうしゅ)”は
稲や麦などの穀物の種を蒔く時期で
今年は6月6日。

旧暦から新暦に切り替わる際に
約ひと月前倒しとなっているので、
現在に置き換えると、
“八十八夜”は4月上旬、
“芒種”は5月上旬あたりの
季節感覚です。

つまり、“八十八夜”で
種もみを発芽させ、
“芒種”に種を蒔き、
そこから約2〜3週間後、
10センチくらいに育った苗の
田植え作業を行います。

また、二十四節気をさらに
三分割した七十二候では、
その時期の自然の様子を
うかがい知ることができます。

こちらも約ひと月前が、
おおよその季節感覚です。

  • 芒種初候(6月5〜9日)
    /“蟷螂生(かまきりしょうず)”
    …かまきりが卵から孵る頃
  • 芒種次候(6月10〜15日)
    /“腐草為蛍
    (くされたるくさほたるとなる)”
    …草の中から蛍が舞い、
    明りを灯しながら飛び交う頃
  • 芒種末候(6月16〜20日)
    /“梅子黄 (うめのみきばむ)
    …青々と大きく実った梅の実が、
    黄色く色付き始める頃

自然の生き物や植物の様子から、
その季節特有の時期を
判断する目安としては、
かなり分かりやすいものです。

とくに“芒種末候”の梅の実が
熟し始める頃というのに
起因して梅雨と呼ばれるように
なったといわれています。

 

全国の地域ごとに異なる田植えシーズン。
品種や生育環境でも微妙なズレがあります。

そんな昔の田植えとは異なり、
現在の田植え事情は、
種もみの品種改良や
農協から育苗を購入、
田植え機による田植えなど、
かなりの省力化が行われています。

とくに、
品種改良された種もみの苗は、
害虫や病害、不純な天候への
強い耐性があるのが特徴です。

一般的な田植えシーズンは
次の時期に分類されています。

  • 北海道/5月下旬
  • 東北/5月中旬〜下旬
  • 関東(千葉/4月下旬、
    茨城・栃木/5月上旬、
    神奈川・群馬・東京
    /6月上旬〜中旬)
  • 北陸/5月上旬〜中旬
  • 中部/5月中旬〜下旬
  • 近畿
    (三重・滋賀
    /4月下旬〜5月上旬、
    京都/5月下旬、
    大阪・兵庫・奈良・和歌山
    /6月上旬)
  • 中国/5月中旬〜6月上旬
  • 四国/5月下旬〜6月中旬
  • 九州/6月中旬〜下旬
  • 沖縄8/月上旬〜中旬

しかし、
早生種、晩生種などの品種ごと、
同じ地方でも寒暖差、
二毛作・二期作など、
田植え時期が異なることも
多いようです。

苗の高さが12〜15センチ、
本葉が3〜5枚、
気温が15℃以上というのが、
ひとつの判断基準となっています。

ちなみに、酒米(酒造好適米)の
「山田錦」の田植えは、
全国シェアの26%を誇る兵庫県下で
6月上旬に行われています。

美味しい食米、旨い酒米ともに、
昔ながらのつくり方を踏襲しつつ、
より生育に適した環境のもと、
これから夏にかけて
スクスクと育っていきます。