睡眠不足を溜め込んだ“睡眠負債”の解消に、短い“昼寝”が効果的。

睡眠不足が慢性化した“睡眠負債”。
働き過ぎの日本人にとって、大きな課題。

“最近徹夜続きで、
ちゃんと寝てないから、
休みの日に寝溜めをする”
などという徹夜自慢の話を、
よく耳にします。

ちょっと無理をした程度の
睡眠不足というのであれば、
それほど気にかけることは
ありません。

しかし、慢性的な睡眠不足は、
“睡眠負債”として、
身体や精神に影響を及ぼします。

“睡眠負債”とは、眠らないことで、
その負担が徐々に
身体へと蓄積している状態。

休日に寝溜めをしても、
長く蓄積された“睡眠負債”は
一気に解消せず、
そのまま生活改善をしないと、
やがて、自律神経の
バランスが崩れることで
イライラがつのり、
疲労感や倦怠感として現れ始めます。

また、自律神経のバランスの崩れは
高血圧や不整脈を誘発し、
肥満による生活習慣病を引き起こす
リスクが高いともいわれます。

フランスのヘルスケア企業が
2年前におこなった
世界主要国14カ国の
平均睡眠時間の調査データによると、
14カ国の平均睡眠時間は7時間8分。

なかでも、日本人の平均睡眠時間は、
6時間22分と世界最短で、
その調査対象の約3割が
6時間を下回った
ショートスリーパー率が高いとの
不名誉な結果に。

日本に続く中国は6時間32分と
日本に近い数値ですが、
3位のイタリアは
30分も多い7時間2分、
14位(最下位)の
ベルギーに至っては7時間34分と、
日本との差は1時間以上もあります。

これまで“日本人は働き過ぎ”と、
ずっと揶揄されてきたことからも、
睡眠と仕事は密接な関係にある
といえるようです。

昔と比べると、祝日法の改正や
ハッピーマンデー制度の導入で、
休日がかなり増えている
にも関わらず休日出勤で働き、
働き方改革が叫ばれると、
定時退社が義務付けられる中、
自宅に仕事を持ち帰って、
家で仕事をする人も
少なくありません。

もともと日本人は、
働くことを美徳とする考え方が
根底にあるため、休むのが苦手。

身体を壊してまで働く、
日本人特有のワーカホリック
(仕事中毒)の気質を
本気で考え直す時期に
きているのかもしれません。

ところが、
世界の平均寿命ランキングを見ると、
日本は世界一の長寿国で、
医療水準も先進国の中では
ダントツの一位。

歴代の長寿世界一記録
(その時の世界最高齢者)を
多数輩出しているなど、
ずっと働きづくめで、
その影響により、確実に
“睡眠負債”を抱えている人が
多い日本にとって、
ちょっと皮肉なお話ともいえます。

暑い盛りの農作業を、
理にかなった“昼寝”によって、
効果的な体力温存。

戦後の復興期を経て
高度成長期の頃は、
国民全体が昼夜を問わず働き、
日本を世界トップクラスの経済大国の
位置にまで押し上げたのですから、
その働き方には
想像を絶するものがあります。

古来、
農業を中心に発展してきた日本は、
各種農作業機械が導入される
わずか数十年前まで、
農作業のほとんどが手仕事で、
朝から晩まで、休む暇などなく、
睡眠時間も、かなり短いものでした。

とくに、毎年5〜6月頃、
その村落全体の共同作業として
田植えが始まると
そこから約ひと月は
厳しい農作業が続きます。

丁度、夏に切り替わり
暑くなり始める時期。

そこに梅雨の蒸し暑い湿気が加わり、
農作業にかかるはずの
体力を奪っていきます。

そうしたことへの対策として、
江戸初期頃、主に関西の
田植えの時期に許されたのが
“昼寝”の風習です。

もっとも暑い時間帯の“昼寝”は、
暑気払いと体力維持という、
とても理にかなった
考え方といえるでしょう。

“昼寝”の開始は、
“八十八夜”
“半夏生(はんげしょう)”など、
その村落の制度によって
異なりますが、
“昼寝”の終わりは、
必ず「八朔(はっさく)」
と決まっていました。

「八朔」とは、
“八月の朔日(旧暦8月1日)”
のことで、
現在の8月末から9月辺りの
季節の感覚。

稲穂が実り始める時期で、
農家にとってその秋の豊作祈願の
行事が行われる節目の日です。

田の実りを祈願する意味から
“田の実の節句”とも呼ばれ、
“田の実”が“頼み”に通じ、
お世話になっている親族など、
普段、頼みごとをする人に
“初穂”を贈る風習も
あったようです。

併せて、徳川家康の江戸城入城が
1590年(天保18年)8月1日
であったことから
「八朔」は祝日となり、
正月に次ぐ重要な日として
毎年祝うようになりました。

農村では、「八朔」の日に
秋の豊穣を願ってつく餅を
食べる風習がありますが、
“八朔のニガモチ”
“昼寝のトリアゲモチ”
などと陰では呼ばれ、
この日で“昼寝”が終わることを
嘆く声の方が多かったようです。

この昔ながらの“昼寝”の習慣、
最近ビジネスの現場でも
見直されているそうです。

昼食後の30分程度の短い仮眠は、
寝覚めも良く睡眠不足の解消にも
つながるとのこと。

まずは「良い睡眠」の条件である
“良い寝つき”“ぐっすり眠る”
“スッキリとした寝起き”
の対策を講じ、足りない場合は、
昼休みの仮眠でカバーというのが、
意外と効果的なようです。