
昭和では当たり前だった懐かしい“夏果”に出会う季節です。
ついこの間までは春の主役だったイチゴが並んでいた棚に、もうスイカが姿を見せ始めています。店頭を彩る果物で季節の移り変わりを実感する反面、果物売り場はどこか画一的です。ひと昔前、果物屋さんの夏の店頭に並んでいたビワや甘夏、スモモなどの果物の姿は、日々の買い物場所がスーパーに移って以降、見る機会も減りました。昭和の昔、駄菓子文化もありましたが、家で食べるおやつは果物が主流の時代。そんな時代に、ビワは、まさに初夏の訪れを告げる果物ですが、今では流通量が大きく減ってスーパーの片隅に置かれている程度。

時期や場所によって異なりますが、3個ほど入った小さなパックが500円前後とやや高めの価格設定です。百貨店などではギフト用の高級フルーツとして扱われているところもあります。その理由として、長崎県と千葉県で市場シェアの約50%と生産地が限られる中、非常に傷みやすく、輸送や保存に不向きであるという事情があります。それでも、あの滑らかな果肉とやさしい香りは魅力的。外側の皮を剥いて丸かぶりした時、大きな種とそれを覆う渋皮のキシキシした食感が、郷愁にも似た懐かしさを思い起こさせてくれます。

甘夏もまた、懐かしい果物のひとつ。少し厚めの皮で、爽やかな酸味の果汁を楽しむその味わいは、暑くなり始める初夏にぴったりの爽快感です。近年、デコポンなどの甘みの強い新しい品種が人気を集め、甘夏のような酸味や種のある果物は敬遠されがちです。厚い皮を剥く手間や酸っぱさもまた、自然に育まれた懐かしい味わいとして記憶に残るもの。口に含むと、あの頃の空気感まで思い出すような気がします。
スモモやさくらんぼも、昔は普通に食べられていた果物でした。スモモの甘酸っぱさも、どこか懐かしい初夏の味。

皮を剥かずにそのまま冷やして食べると、口の中がさっぱりと整うような、涼感のある果物です。さくらんぼも今では高級フルーツの代表格となりましたが、かつては旬になると小さなパックで売られていて、家族で分け合って食べる楽しみがありました。そして、さくらんぼといえば、誰もが一度は試したことのあるあの遊び…軸を舌で転がして口の中で結べたら恋が実る、という小さな挑戦。上手く結べたときの得意げな気持ちや、そっと真似したあのときの記憶も、季節とともに蘇ってくるものです。

確かにこの季節を代表するスイカは、品種改良によって糖度が15度を超えるなど、人気の果物ならではの進化を遂げているのも大きな魅力です。しかし、果物は、ただ食べるだけのものではありません。季節を感じ、思い出と結びついて、どこか心を和ませてくれる存在です。手軽さを優先する現代では、昔ながらの果物は敬遠されがちですが、その素朴さや手間こそが、季節の輪郭を私たちに教えてくれます。ビワや甘夏を見かけたなら、ぜひ手に取ってみてください。かつての初夏の空気と甘酸っぱい記憶が、きっと心に小さな季節の余韻を残してくれることでしょう。
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