誰もが持っている小学校時代の「朝顔」の記憶。

失敗の少ない「朝顔」栽培。種蒔きから約2カ月で、
キレイな花を拝めます。

夏が始まる前に種を蒔き、
それぞれが大きく育てた「朝顔」を
1学期の終業式の日に家に持ち帰る…
小学校低学年の頃の
懐かしい思い出として、
みなさんの遠い記憶に
刻まれていませんか。

もしかすると持ち帰らずに
日当たりの良い校舎周辺に
おいていたかも。

ではなぜ、「朝顔」なのでしょうか。

学習指導要領によると
“低学年の児童でも
栽培が容易なもので、
植物の成長の様子や特徴が
とらえやすく、
確かな実りを実感でき
満足感や成就感を得られるもの”
との記載はありますが、
「朝顔」と限定されている訳では
ありません。

数ある植物の中から、
なぜ「朝顔」が採用されることが
多いのかというと、
小学校低学年でも育てやすく、
短い期間で成長し、
見た目の変化が大きいという点が
挙げられます。

昔は理科の栽培実習として、
学習指導要領改正後は
生活科の授業で「朝顔」の栽培実習が
取り入れられているとのこと。

具体的には、
小学校1年生の
ゴールデンウイーク後の授業で
種を蒔きます。

「朝顔」は、
約2カ月で花を咲かせるので、
夏休みまでに成長の過程を
十分に観察できるのが特徴。

土と日光、水があれば簡単に育ち、
たとえ痩せた土でも追肥の必要がなく
学習用の鉢に
水を入れたペットボトルを
逆さまに挿しておけば
水分補給も容易というのも
採用される基準のひとつといえます。

ほぼ失敗しない初めての
植物栽培に適した教材のようです。

「朝顔」は
ツル性を持つ植物の代表格で、
種蒔き、発芽、葉の成長過程、
そして開花と、
約2カ月で一連の成長観察ができ、
夏休み時期に
家へと持ち帰ってからも
観察が続けられ、
種の収穫までの成長の流れを
見届けることができます。

さらに、観察に加え、絵日記、
花を摘んで押し花、
同じ色の花を集めて
色水をつくって絵を描いたり、
栽培後のツルを集めて
ひと足早い
クリスマスリースづくりなど、
捨てるところが少なく、
多様な自由研究にうってつけなのが
「朝顔」です。

また収穫した種を
翌年に植えるというのも、
命をつなげるという学習にも
なり得るようです。

ちなみに、「朝顔」の開花は、
日没後約10時間前後とのこと。

「朝顔」を植えて育てている方は、
一度確認してみるのも
面白いかも知れませんね。

最初の「朝顔」ブームは、江戸時代末期。

「朝顔」の原産は、
自生種があることから、
ヒマラヤ、ネパールから
中国にかけてのエリアや
熱帯アジアという諸説がありましたが
近年、そこに、
熱帯アメリカ大陸が原産地
との説が加わったとのことです。

日本に伝わったのは奈良時代末期。

当時、遣唐使が、
その種子を薬として持ち帰ったものが
日本に伝来した最初とされています。

ただ、遣唐使が
「朝顔」の種を持ち帰ったのが
平安時代とする説もあり、
その場合、
万葉集に出てくる「朝顔」は、
キキョウやムクゲのことを
指しているといわれています。

薬としての薬効は主に下剤で、
煮たり焼いたり炒ったりなど
熱を加えることで
その効能を発揮しますが、
毒性が強く素人判断の服用は
厳禁だったようです。

「朝顔」の葉を細かく刻んで揉み、
当時、便器に投入しておくと
虫が湧かないという使い方も
されていました。

日本に伝わった当初は、
漢名の「牽牛(けんぎゅう)」と
呼ばれ、
和名の「朝顔」が使われ始めたのは
平安時代からのこと。
古代中国において「朝顔」は、
牛と交換取引されるほど高価な薬。

現在も「朝顔」の種子は、
漢方の下剤や
利尿剤として利用されています。

時代は移り、
江戸時代は比較的平和な
時代だったこともあり、
「朝顔」も園芸で楽しむものとして
趣味の分野での
人気が高まっていました。

意外にも、1806年(文化3年)の
江戸の大火がキッカケとなって
「朝顔」ブームが起こります。

火事の跡地を更地にして、
「朝顔」を植えたところ、
それまで見たこともない
珍しい「朝顔」が咲いたことで
ブームが巻き起こりました。

子供の頃の「朝顔」栽培は、
懐かしい思い出として、
誰もが共有できる
共通認識のひとつです。

デジタルな疑似体験が増えた現在、
数少ない貴重な実体験ともいえます。

品種によっては、
この時期に種蒔きが可能な
「朝顔」もあるようです。

興味のある方は、
今年の「朝顔」栽培、
されてみてはいかがでしょうか。