「正月事始め」の主行事が“煤払い”。東西両本願寺の“煤払い”は圧巻です。

年末恒例の“煤払い”は、長年続く伝統行事。

年末のニュースで、
京都の東本願寺、西本願寺の
“煤払い(すすはらい)”
の様子が流れてくると、
“もうそんな時期か”と、
年の瀬を実感。

というのも、
新しい年まであとわずかとなり、
僧侶達が掃除をしている姿を見て、
大掃除をしなくてはという思いに
なる方も少なくないようです。

東本願寺、西本願寺の
“煤払い”の歴史は古く、
室町時代の浄土真宗中興の祖とも
称される蓮如の頃から
500年余り続く伝統の行事です。

戦国時代、蓮如によって
建立された石山本願寺は
難攻不落の砦とされていましたが、
織田信長によって10年以上
攻め続けられ、和睦か、そのまま
戦うかの議論が対立を生み、
宗派内は完全に分裂状態に。

信長の死後、
秀吉側の西本願寺と
家康側の東本願寺
(正式名称は真宗本廟)が誕生し、
江戸時代の前半頃までは
断絶状態が続きました。

ところが、江戸後期になって
歩み寄りが行われ、現在では、
東西の本願寺は真宗教団連合
という組織で活動する良好な関係が
築かれています。

その両本願寺の広い本堂を
僧侶や門徒たちが行う
“煤払い”ですが、東西で
開始時間やその作法は異なります。

毎年12月20日の午前7時頃に
西本願寺の“煤払い”がスタート。

数百畳もある本堂の畳を、
500人以上もの人によって、
中央から外側に向かって
竹の棒で叩き、
舞った埃を大きなうちわで
外に掃き出していきます。

それから遅れること約2時間、
午前9時頃から東本願寺の
“煤払い”がスタート。

こちらでは、僧侶や門徒たちが
横一列にまっすぐに並び、
端から順に竹の棒と
大きなうちわを持ち、
一斉に畳を叩いて
埃を掃き出します。

西本願寺から東に約1km
(実際には、南下して
七条堀川交差点を左折し、
まっすぐ進んだ後、
烏丸七条交差点を北上)、
徒歩約15分に位置するのが
東本願寺なので、
西本願寺と東本願寺の
“煤払い”を続けて見学する
時間的な余裕は十分にあります。

今の生活では部屋に
煤が溜まることはありませんが、
昔は炊事のときに薪を使い、
照明にろうそくや
行灯を使っていたので、
家の中は煤で汚れていました。

そのため、天井や壁に
煤が溜まりました。

また、神社仏閣などでも、
本堂や本殿でろうそくに火を灯し、
線香を焚くので煤は溜まり、
埃と一緒になった煤汚れを
年末に掃除をするのが
“煤払い”です。

これは、ただ単に
汚れを落とすというだけでなく、
新しい年に福を授けにお越しになる
“年神様”をお迎えするために、
1年の穢れを落として家の中を
清める意味を持っています。

余談ですが、
この煤けて黒くなった
埃の塊を長年放置すると、
精霊を宿した付喪神(つくもがみ)の
“煤わたり”になる
という言い伝えが。

これをモチーフにしたキャラクターが、
人気アニメ「となりのトトロ」の
“まっくろくろすけ”であり、
「千と千尋の神隠し」の
釜爺(かまじい)の下働きで
炭を運ぶ“煤わたり”なのです。

12月13日が暦の上での「正月事始め」ですが、“煤払い”の日付はさまざま。

この“煤払い”と
“松迎え”の行事を行うのが、
「正月事始め」です。

年の暮れに「事始め」を行うのは、
“事”である正月祭事に向けた
準備を“始める”という
意味からきています。

“松迎え”は、“年神様”を
お迎えするための門松にする松、
おせち料理やお雑煮をつくるために
使う薪(たきぎ)を
山に刈りに行く行事です。

この「正月事始め」の日以降、
新年に向けた準備が
始まる日とされます。

「正月事始め」は
旧暦12月13日に行われていたものが、
新暦になってもその日付のままで
行われている風習で、
“煤払い”がこの日の主となる行事。

また、京都祇園の舞妓さんなど、
古いしきたりの業界などでは
年納めの挨拶回りをする大切な日です。

神奈川県の鶴岡八幡宮や
小田原城をはじめ、
全国の数多くの寺社仏閣などでは、
年中行事として12月13日に
「正月事始め」の
“煤払い”を行ないます。

「正月事始め」の起源は古く、
“事八日(ことようか)”という
古の風習の12月8日を正月に向けた
“事始め”としていた習わしを元に、
江戸時代になって以降、12月20日を
「正月事始め」の日と定め、
江戸城の大掃除を行なっていました。

ところが、三代将軍の家光が
12月20日に亡くなったことで、
その命日を避ける意味で、
婚礼以外は吉という
“鬼宿日”である12月13日に。

冒頭で紹介した
歴史のある両本願寺などは、
その長い伝統を続ける意味で、
12月20日に“煤払い”が
行われているようです。

“煤払い”は
“大掃除”に名を変え、
1年の穢れを拭い去って
新しい年を迎えるという考え方が、
いまなお受け継がれています。

普段の掃除では行き届いていない
部屋の隅や棚の奥など、
今年はキレイに掃除をすることで、
気持ち良く縁起の良い
新年を迎えましょう。