地蔵盆は、関西の風土に育まれた子どもたちの夏の終わりの一大イベント。

地蔵盆の翌日から、一気に夏休みの宿題モードに突入した思い出。

一般的に、8月23日、24日の両日は地蔵盆。この行事、実は全国的なものではなく、関西圏特有の文化だということをご存知でしょうか。もともと地蔵盆は、地蔵菩薩の縁日にあたる日を中心に、町内でお地蔵さんを祀り、子どもたちの無病息災や成長を願う行事として定着しました。仏教の盛んな関西では、地域ごとにお地蔵さんが祀られ、町内の人々が中心となって夏の終わりの一大イベントとして開催されてきました。

一方、関東では地蔵盆という行事はあまり知られていません。似たような信仰として、子どもを食べていた鬼女が改心し、子育てと安産の守護神になったという鬼子母神信仰が根づいています。関東の一部では、鬼子母神と地蔵菩薩を並べて祀り、子どもを守る神仏として個人信仰や寺院の法要を中心に大切にされています。

しかし関西の地蔵盆は、もっと地域ぐるみの“子ども主体の行事”です。平成初期の頃までは、地蔵盆といえば“夏休み最後のイベント”でした。子どもたちの名前が書かれた提灯が軒先やお地蔵さんの周りに吊るされ、お菓子やスイカが供えられます。夜になると、小さな盆踊りの輪ができ、子どもたちは夜でも“堂々と遊べる特別な日”としてはしゃいだものです。

そして、この日を境に“そろそろ宿題やらなきゃ”という空気が漂いはじめる、二学期への“助走期間”でもありました。まさに失われつつある昭和の原風景なのかもしれません。地蔵盆の準備もまた、子どもにとっては楽しみのひとつでした。前日や当日の昼間に町内の大人たちと一緒に提灯の紐を張ったり、お菓子を袋に詰めたりする作業は、まるでお祭りの裏方になったようなワクワク感がありました。地蔵盆は、ただ与えられる行事ではなく、子どもたちが“参加する”ことで学び、大人たちと交流できる行事だったのです。

だからこそ、記憶の奥に強く残っているのかもしれません。近年では、こうした風景も少しずつ姿を消しつつあります。

近年では、戸建て住宅からマンション住まいへと生活様式が変化し、町のあちらこちらにあったお地蔵さんが撤去されたり、祠だけが残されたまま管理されていないケースも増えました。町内会の活動も縮小傾向で、大人と子どもが自然に交わる機会が減り、地蔵盆のような町ぐるみの行事そのものが成り立ちにくくなってきています。

もちろん、時代が変われば風景も変わります。行事がなくなったことも時代が変化する通過点に過ぎません。

ただ、地蔵盆がもっていた“地域の中で子どもを見守る”という優しいまなざしとつながりは、形を変えてでも残していけたら…と思いたいものです。

夏の終わりの夜、提灯の光に照らされた小さな輪の中で踊る子どもたち。その原風景を思い出しながら、ほんの少しだけ、ご近所とのつながりを大切にしたい。そんな気持ちになる8月の終わりです。

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