今年の春は是非、“菜の花畑”観光を。その壮大な美しさに目を奪われます。

アニメ作品の“聖地巡礼”をキッカケに、地方の観光誘致が充実しています。

若い人たちの間で流行っている
“聖地巡礼”をご存知でしょうか。

もともとは宗教上の重要な意味を持つ
聖地に信者が赴くという
意味なのですが、それが転じて、
映画やドラマのロケ地、
アニメの舞台となった所縁ある地を
訪れることを指します。

なかでもとりわけ、独自の進化を
遂げた日本のアニメ作品の
“聖地巡礼”には熱狂的な
ファンが多く、
精緻に描かれた魅力的な
舞台となったアニメの“聖地”には、
日本のみならず世界各国から
ファンが訪れるなど、
観光地化しているところも
少なくありません。

諸説ありますが、最初の
“聖地巡礼”は、
1992年(平成4年)の
「美少女戦士セーラームーン」
からのようで、“聖地巡礼”
そのものは昔からあったアニメの
楽しみ方のひとつとされています。

再び“聖地巡礼”が脚光を浴びる
キッカケとなったのは、
2016年(平成28年)に
空前の大ヒットとなった
「君の名は。」です。

実際に、“聖地巡礼”は、
この年の新語・流行語大賞の
トップテンに選出され、
ブームを再燃させるばかりか、
広く一般に
知れわたることとなりました。

昨年夏に公開されたアニメ作品
「きみと、波にのれたら」は、
新型コロナ禍だったこともあり、
それほど大きなヒットには
繋がりませんでしたが、片寄涼太、
川栄李奈、松本穂香など主役クラスの
若手俳優が声優を務めるなど
作品のポテンシャルはかなり高め。

この作品にも“聖地巡礼”とされる
場所が多く登場します。

なかでもとくに、一面に広がる
菜の花畑を分け入るように
“いすみ鉄道”の黄色い電車が
走り抜けるシーンは、
ほろ苦いストーリーと相まって、
心を癒やしてくれる大事なシーンの
ひとつとなっています。

実は、この“いすみ鉄道”は、
“聖地巡礼”で話題になる前から
よく知られた菜の花畑の
人気スポットなんです。

千葉県房総半島の太平洋に面した
東海岸に位置するいすみ市と
山間部の大多喜町を結ぶ
“いすみ鉄道”は、
別名“菜の花列車”。

3月上旬から4月にかけて沿線の
広範囲に菜の花畑が広がる全国でも
珍しい菜の花畑が群生するエリアで、
実際に黄色く染まった菜の花の
絨毯の間を突き進む黄色い単車両の
可愛らしさは、子供の頃に
夢見たようなおとぎ話の
ひとコマを見ているよう。

沿線には桜やあじさいも
植えられており、比較的長い菜の花の
開花時期と桜の開花時期が重なって、
さらに自然が織りなす色鮮やかな
原風景を紡ぎ出しています。

一生に一度は見ておきたい“いすみ鉄道”沿線の菜の花畑。

実際に“いすみ鉄道”の
菜の花畑観光に利用される行程を
紹介しましょう。

東京駅を起点として、
京葉線の蘇我駅で内房線に乗り換え、
五井駅まで約1時間半。

五井駅からは房総半島を南東に
外房線の大原駅に抜ける
山間部を走る“小湊鐵道”
“いすみ鉄道”を乗り継ぎます。

まず、“小湊鐵道”五井駅から
上総中野駅まで約1時間半。

そこで連絡している“いすみ鉄道”に
乗り換え、外房線とつながる
大原駅まで約1時間。

最初に乗る“小湊鐵道”の
半ばを過ぎた高滝駅や飯給駅、
養老渓谷駅辺りに菜の花畑が
点在し始め、上総中野駅で
“いすみ鉄道”に乗り換えて以降は
沿線沿いに群生する菜の花畑が
あちらこちらで出迎えてくれます。

両鉄道ともローカル線であるがゆえ、
本数が少なく、上総中野駅での
乗り継ぎ連絡が悪いと
約1時間近く待つことも。

日帰りならば早朝出発でないと
現地で楽しむ時間が
あまり取れないのでご注意を。

1泊するなら、沿線沿いの秘湯の旅を
組み込むのもこの時期の
醍醐味なのかも知れません。

これから4月上旬までの約ひと月は
群生する菜の花が美しい時期。

できるなら、一度はこの地を訪れ、
実際にその目に焼き付けておきたい
絶景といっても過言ではありません。

ディーゼルのレトロな
車両に揺られて、ゆったりと過ごす
時間もひとしおです。

春の花といえば、開花期間の短い
たおやかな桜ばかりが
注目されがちですが、
菜の花畑の黄色い絨毯も
見劣りすることはありません。

北海道から九州まで全国各地に
菜の花畑があり、地域や品種によって
2月中旬ごろから5月上旬辺りまで
見事に咲き誇っています。

今年の春は、菜の花畑を
実際にその目にして、
その感動を心に刻んだ後は、
“花より団子”とばかりに菜の花の
おひたしや胡麻和えなど、
春の美味しさを
楽しんでみるのもおつなもの。

季節を楽しむ料理には、
辛口のお酒がお似合いです。