“鯖街道”から生まれた、サバの鮮度を美味しく保つ技術。

駆け足で過ぎる秋を美味しくいただくために…サバの歴史ごと、熱燗で一杯。

つい先日まで、
“この時期になっても
まだ真夏日が続き…”と
お天気キャスターがいっていたはずが
ときおり肌に触れる風を
急に冷たく感じるようになりました。

こうなると、秋は駆け足で深まり、
瞬く間に冬が訪れるので、
秋を満喫できる期間が
意外と短いことに気づきます。

この時期のお楽しみは、
なんといっても美味しい食材が
スーパー店頭に並ぶことです。

秋に旬を迎える食材はかなり豊富で、
野菜や果物、魚など、
陳列される種類が一気に増え、
商品棚の彩りや商品構成の厚みに
圧倒され、
改めて
秋の訪れを実感させてくれます。

今回は、
秋が旬のサンマと双璧ともいえる、
この時期の美味しいサバについて
紐解きます。

サバの中でも、
市場に多く出回るマサバは、
7月から2月が旬。

“秋サバ”“寒サバ”とも呼ばれる、
産卵を終えたこの時期のマサバは
脂ののりが良いのが特徴です。

普通は産卵で
エネルギーを使い果たした
魚のメスは、
あまり美味しくないのが一般的。

しかし、サバは、
産卵後にも寒流で運ばれた
栄養豊富なプランクトンを餌として
体内に脂肪を蓄えます。

サバは、“オメガ-3脂肪酸”や
“DHA(ドコサヘキサエン酸)”
などの健康に良い脂肪を豊富に含み、
これらの脂質と筋肉組織が
身を引き締め、
特有の風味を持たせるため、
一層美味しく感じさせるようです。

ゴマサバは、
一年を通して市場に流通し、
年中安定した味や脂ののりが特徴。

とりわけ冬場の大きなゴマサバは、
さらに脂が乗って、
一層美味しくなっているようです。

その昔、
日本海で獲れたサバを
山越えで内陸部の街へと運んだ道を
「鯖街道」と呼び、
その歴史は古いものだと
奈良時代まで遡る
ともいわれています。

「鯖街道」といえば、
若狭湾・小浜と京都市街を結ぶ
ルートである
“若狭街道”が有名ですが、
これ以外にも、島根・出雲から
広島へと続く“宍道尾道街道”や
鳥取・境港と岡山・津山を結ぶ
“出雲街道”、
鳥取・酒津から
兵庫の山間の集落に運ばれた
“因幡街道(若桜往来)”、
若狭から京都に向かう
“高浜街道”は、別称“西の鯖街道”
とも呼ばれる最短ルートですが、
険しい山道を
越えなければなりません。

さらに若狭湾から近江に抜け
関ヶ原へと抜ける“北国脇往還”、
福井・越前から
美濃・郡上八幡までの“美濃街道”
などの“鯖の道”があります。

“サバの生き腐れ
(新鮮そうに見えているが
腐り始めている)”に表されるように
サバの鮮度は落ちやすいとされ、
氷が貴重な時代に
傷みやすいサバを、
一昼夜かけて運ぶための
さまざまな工夫が誕生。

多くは、サバを素材として
使いやすくするために塩を振る方法で
京に着く頃には程よい塩加減で
身も締まり、食卓を賑わしました。

これ以外にも、
魚と米飯を漬け込んで発酵させた
“なれずし”や、
サバを1年間、糠に漬け込んだ
“へしこ”、
酢で締めたサバを棒寿司にした
“鯖寿司”、
サバを1尾まるごとに
串に刺して焼いた“浜焼きサバ”など
美味しく食べる工夫が
生み出されました。

どれも冷え込んだ夜半、
熱燗にぴったりの肴といえます。

菊正宗が誇るうまい辛口の王道。「菊正宗 嘉宝蔵 雅 720mL」を熱燗で一杯。